第2話 空き時間
「史郎、今六時ニ十分な。どうする館内見て回るか?」
「そうだな、外はもう暗いし。さってどこから周るか」
「ゲームスペース、展示スペース、温泉、玄関、中庭はここから出られるらしいが、まだ時間的にも行ける。
俺さっきそこから下見たんだけどライトとかついてて
そこそこ広くて歩くには良いかもしれない。」
「ほーん、じゃそこ行くか。秋を堪能しないと、夜の秋だな。スマホ持って」
「持った持った、貴重品は金庫に入ってるよな」
「さっき見ただろう。あ、ちょっと待って表いくなら羽織」
「羽織って、なんかお前旅館に慣れてるな?」
「これすっげー柄があるぞ、お前紫な。俺茶色」
「何色中の紫なんだよ」
「え、ピンクが良かった?」
「やめろ。
俺らの部屋から結構距離あるし、さっと行かないとバイキング遅れそうだし
冷えるから行くぞ」
「あ、待った。いや、いいわ」
「そうだ、史郎。俺いいもん買ったんだよね。じゃじゃーん」
「あー、馬郷大夢の怪談」
「シュチュ短編ばっかでさあ、俺読み込んだから中庭で使えそうなとこ使おう」
俺は隼人の手から小冊子をさっと取り上げると机の上に投げて
空いた手に代わりにペンライトを握らせる。
「だめ、転ぶからこっちな」
「お前は、あーもう早くいくぞ」
後から廊下に出た俺は部屋の鍵を閉める
赤い絨毯の敷かれた廊下をスリッパでパタパタ歩いて
先に歩いていた隼人に追いつくと天井の電気が一つ瞬きをした。
「史郎、俺さ」
「いや、いいわ」
俺は少し先の廊下に貼られた黄色いビールの広告に視線を移して
隼人の言葉の先を何も考えないことにした。
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