困っている君が好き

流星未来

第1話 旅は温泉

「熱い温泉に色づく山、そしてこの石。いいね」

「部屋に帰れば秋の幸」

「山の秋の幸って言えばきのこか」

「お前の頭じゃん」


ゲラゲラ笑って、うわさ話に花を咲かせ温泉を堪能すると俺たちは部屋へ戻った。

俺たちのいる藤の間は春には眼下の藤棚が咲き誇るらしいが今は何もない。


彼女もいない男二人旅、昨今の男子事情として化粧っけはある。


「隼人、化粧水早くつけて乳液も塗った方がいいぞほら、俺のおすすめ!」

「いいから、俺ジェルだから」

「お前ジェル派かよ、ジェル前に化粧水付けるのもありだぞ」

「いらねー、めんどくせーだけだろ」

「いや、叩き込むとぷにぷに感が違う。このぷにぷに感、触ってみろ」

「お前をぷにぷにする趣味わないわ!

なんか別の方向に言ってないかお前」

「……確かに俺雑誌とか買い始めたわ」

「まだ戻れる帰ってこい。史郎~」


俺たちがふざけあっていると襖の向こうから仲居さんの声がかかる


「失礼いたします」


襖が開く前に気が付けば俺たちは座布団に正座していた。


「ご予約のバイキングですが八時半からとなっておりますので

お時間になりましたら一階にお越しください」

「はい。どうもありがとうございます」

「こちら当館の時刻表など書かれたパンフレットとなっております。

こちらに置いておきますので。それでは失礼いたします」


襖が閉まりきるまで頭を下げ続けると俺はパンフレットを手に取って

隼人が見やすいように机の上に広げる。

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