第27話 ローダウン

季節は秋になり涼しい日も多くなってきたこの日、マサミは地元のバイク屋にいた。

傍らにはサスペンションが1本置いてある。

ショートショックだ。

念願のローダウン。かなり高額だったが車検にも対応し走り心地も損なわない。

リジットサスにすれば車高はベタベタでノーマルフェンダーでも十分にカッコ良かったがさすがに鉄の棒であり乗り心地が損なわれてしまう。車体にも良くない。

見た目も大事だが走ってなんぼである。


今回、店長はすんなりとサスの交換を受け入れてくれた。

違法改造ではないからだ。

それにもう諦めたようだった。

実際、田舎の町ではどんな依頼でも受けなければ金にならないのが本音だろうしマサミも販売店が対応してくれないと困る事が多いのは確かだった。


車体をジャッキアップしていく。

リアタイヤが浮くか浮かないかの所で止めサスを外しショートショックと付け替えた。

サスを付け替えると今度はフェンダーの交換をする。

シートを外しテールランプ、ナンバーも外す。

フェンダー交換は自分で出来そうだったが店長に任せた。

理由はテールランプにあった。

純正は使用できないので必然的に交換になる。

となると思い出されるのはウィンカー交換時の失敗だ。

同じ失敗を繰り返さないため店長にお願いしたのだ。


1時間もすると交換はすべて終わった。

バイクに跨ると、つま先立ちだった足が踵まで着くようになっていた。

ほんの少しの事だったがうれしかった。

つま先立ちと踵が着くのでは乗りやすさも見た目も違う。

走って見るとサスは少し硬めに感じた。

ようやくカスタムに一区切りできたと思ったが何かを変えると何かが気になる。

今度はこの野暮ったいシートだ。

確かに座り心地はいい。が、マサミの目指すドラッグスタイルには似合わない。

『今度はシートか…』

また5万円コースだ。


1年目のシーズンが終わりを迎えようとしていた。










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小さい男とバイクの話 高橋 アオイ @19730405m

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