第71話 どうして


「は、はじめまして…ひ、緋村蒼介です…」

「蒼くん…」

「やあ、いらっしゃい。あけましておめでとう。蒼介くん」

「はい、あけましておめでとうございます」

「まあそんなに緊張しないで。さあ、上がって上がって」


結局、初詣を大晦日の夜に行ったので、静琉の実家に帰るのは元旦となり、二泊三日で帰省することに


「…お邪魔します」

「蒼くん、大丈夫?」

「はい…」


にこやかな笑顔で出迎えてくれた静琉のお父さんとお母さん。それに対し、おそらく引きつった笑顔の俺。緊張するなと言う方が無茶だと思う


とりあえず、静琉のご両親に挨拶して中へ入ったはいいけど、俺が思ってたより全然気さくに話しかけてくれて、そのおかげか少しは緊張もほぐれたと思う


でも、話の節々に俺の事をだいぶ前から知ってるふうなニュアンスが。

…なんでだ…?


「ああ、真希さんから聞いてるからね」

「え!?」

「あれ?聞いてないの?」


真希さんというのは俺の母さんの事。

どうやら、静琉のお母さんとうちの母さんは職場の同僚で、もう長い付き合いらしい。

それは静琉も初耳だったようで、


「そうなの!?」

「そうなのよ。うふふ」

「いや、うふふじゃないし!」


それな

なんでどこの親も、結構大事な事を子供に話さないんだろう…


「あ…でも…ということは…」


ということは?


「いつでもいいよってことよね…」


なんの事か分からないけど、違うと思うよ。

ほら、そこでもじもじしない


「あらあら、この子ったら」

「お母さんに似て、静琉は可愛いなぁ」

「やだ、もう…あなたったら」


すみません…

そういうのは俺のいない所でお願いします…


でも、凄く仲良さそうで、幸せそうだな


そんな事を思っていると、


「…静琉。久しぶりに帰って来たんだ。陸斗りくとに顔でも見せてやってきなさい」

「あ…うん…」

「その間、蒼介くんと色々話したいこともあるし」

「…分かった」


ん?りくと?誰だろう…

今この家に、他に誰かいそうでもないし、その少し悲しそうな静琉の表情は…

そして、俺と色々何を話すんだろう…





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「蒼介くん」

「はい」


静琉はお母さんと一緒に部屋を出て行き、今この客間には、俺とお父さんだけが残った


「どこから話そうか…」

「………」

「そうだね。さっき、うちの家内と君のお母さんが知り合いだという話はしたね」

「はい。驚きました」

「そうか。私も君のお母さん、そしてお父さんの事は知ってるんだよ」

「え!?…そうなんですか…」


元々は、母さんと静琉のお母さんが、職場の同僚ということだけだったらしい。

でも、例の一件で…


「あの時は私達もショックでね」

「…いえ、別にみなさんが悪いわけじゃ…」

「君達が転校したあと、まあ、引っ越すことになったわけだが、いきなり転職するというのも難しくてね」


そう。そして引越しだけして、仕事はそのまま続けることにした。でも…


「そうなんだ。うちに来るまで、県をまたいでそれなりに遠かっただろ?」

「そうですね」

「それでね、私達は君のご両親が、この街で住める場所を提供することにしたんだ」

「…そうだったんですか」

「ああ。もちろん最初は断られたよ。「そんな事までご迷惑はかけられない」ってね。でも、それくらいの事でもしないと、私達の気が済まなくてね」

「気を使って頂き、ありがとうございます」

「ご両親だけじゃなく、君達兄弟にも迷惑をかけたわけだし、それくらいはね」


なるほど。うちと速水家は深い繋がりがあったんだな。だから初対面の俺にも気さくに接してくれてるんだ

…これも兄さんのおかげか…


「蒼介くん。君にこんな事を話してもあまりいい気分はしないかもしれないと思う。失礼だと承知の上だが、どうか聞いてくれ」

「え…はい…」

「最初に言っておくけど、私は、家内もそうだが、君と静琉には幸せになって欲しいと思っている。それだけは信じて欲しい」

「はい。ありがとうこざいます」

「じゃあ、少し長くなるかもしれないが、最後まで聞いてくれ」




どうしてお父さんがこんな事を言ったのか。

そして、どうして静琉が少しヤンデレっぽくなってしまったのか



話を聞いてみて…分かった…






……………………………………………


作者の月那です m(*_ _)m


この物語も残りあと数話となります


ここまで読んで頂いた皆様、あともう少しの間だけ、お付き合いくださいね




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