第68話 当たり前


翌日、本当は今日も学園祭はあるんだけど、女装コンテストやらミスコンやら、そういった催しが目白押しで、今日は昨日より混雑するとのこと。

「昨日行ったし、いいよね?」と静琉が言うので、二人でのんびり過ごすことに



それから一月くらいは穏やかな時間が続いたと思う。

当初お泊まりは週末だけという約束だったけど、母さんの了承を得てからはそれも増え、だいたい週五、多い時は週七といった具合だ


そして街もざわつき始める季節となる


そう


クリスマス




の前に、


「蒼くん20日なんだよね」

「うん。静琉は22日なんだ」

「そうそう。なんか凄いよね」


俺と彼女の誕生日、それが丁度クリスマス前で2日違いだったのだ


「何か欲しいものある?」

「いやぁ、特には。静琉がいてくれればそれだけでいいよ」

「もう…デレ過ぎだよ…」

「そう言う静琉は?」

「私も…蒼くんがいてくれれば…」


なんだ…これ…


自分が言う分には恥ずかしくなかったけど、いざ相手に言われるとめちゃくちゃ照れる


「き、期末テストもまずまずだったし、静琉のおかげだよ」


動揺してしまい、全然関係ない話を振ってしまうものの、


「私は…一緒にいれて嬉しかったから…」


と、伏せ目がちに、恥ずかしそうに言う彼女



なんだ、これ…

どうすればいい…?


「え、えっと…冬休みはどうしようか」


とりあえず、また別の話でお茶を濁してみる


「え?実家に帰るよ」


さも当然という感じで返された

さっきまでのデレは何処に行った?


俺は少しだけ寂しく感じながらも、「そうなんだ」と無難に答えた。すると、


「ねえ、いつ帰る?」

「え?」

「二人で年越ししてから、2日とかどうかな、って思ってるんだけど。バイトも5日からは入ってるし、それまでには戻らないと」

「え?う、うん…いいんじゃないかな…」

「蒼くんは4日からだよね」

「そうだよ」

「じゃあ、一泊二日かな」

「なんで?静琉は5日からなんでしょ?」

「蒼くんは4日からなんでしょ?」

「うん。だから二泊じゃないの?」

「なんで?それだとバイト行けなくなるよ」

「いや、だから、静琉は5日からなんだから大丈夫じゃん」

「…先に一人で帰る、ってこと?」


ん?


これは、あれかな?


「あの…もしかして俺も…?」

「当たり前でしょ?」


当たり前なんだ…


「いや、でもいきなりお正月に…」

「だって、約束だったもんね?」

「約束?」

「うん!今度はうちの親に会ってもらうの」


約束してたっけ…


「そ、そういえば、そんな話もあったかな」

「もう話は通してあるから大丈夫だよ」


もう話してるんだ…


「あの、俺が行っていいの?ていうか、たぶんうちの親がここに帰ってくるよ。さすがに俺はここにいないと」

「あ、大丈夫」

「何が?」

「お義母さんにはもう話してるから」

「え?何を?」

「向こうで会う、って」

「え?」


いや、全然理解出来ないんだけど


母さんに話してるから、っていうのはいいとして、なんで静琉の実家について行って、うちの親に会えるんだ?

まさか、うちの両親まで呼び寄せるの?

さすがにそれは母さんでもしないだろう


「なんで静琉の実家で会えるの?わざわざうちの親がそこまで来るって話?」

「違うよ。元々そこにいるから、逆に助かるって言ってたくらいだよ」


元々そこにいる…?…どういうこと?


「え…もしかして、知らなかった?」

「どういう…」


いや、なんとなく…分かった…そう、


「蒼くんのご両親、あの街にいるんだよ」


そうか…うん、そうだったんだ





おかげでいろいろと納得したよ





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