第16話 陽性


 次の日、西城さんはまた職員と一緒に病院に言った。顔色は昨日より悪くて、座っている姿勢も右側に傾いている。座っているだけできついのだろう。八木さんがまた応援に行きそうなのを吉井さんがピシャリと止める。

 3時間程度でまた、西城さんが帰ってきた。帰ってきた時には、職員はビニール製

のエプロンと手袋をつけていた。そして、無言で西城さんを部屋に連れていく。その後に、消毒ポンプを持った職員が西城さんの部屋に行き、消毒しているのが見えた。

 何があったの?私は、そっとステーションの方に車いすを走らせた。

 病院に連れて行った職員が報告を始めている。

「その他、近隣の病院に問い合わせたけれど、コロナ陽性中は受け入れ不可です。コロナの治療はここで対応することになりました。解熱してから1週間後に受診して、もう一度総合病院でPCR検査を受けた後、陰性だったら治療できるそうです。」

「えー、どうするの?西城さん動いちゃうんですけど。もともと、人に助けてもらうの嫌いな人でしょう。ナースコールも押してくれないし。夜勤帯は歩いてトイレに行こうとしてたよ。」

「認知も落ちてるし、せん妄状態っていうの?転倒の危険は大きいね。」

「センサーマットつけましょう。巡回も頻回にして。」

「センサーマット、今は横山、田中、伊部、小川、細田さんににいてますね。西城さんが加わるのか。夜勤の休憩は、ほぼなし。つらいわ。センサーマットをつけるってことは身体拘束会議も開かなくちゃね。コロナで職員の仙田、太田、山中、刈谷、幸田さんがお休みだよー。さあ、どうする?」

「どうする?もう、笑うしかないわ。もう、いっそ、コロナになって休みたい。」

「私、転職しようかなあ。」

 職員が悲しそうに笑う。

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