第11話 転倒

 朝、早く目が覚めてしまったので、食事を食べる席にいることにした。本や新聞があるので読んでいた。特にやることはないの。家と違ってなんでもやってもらえるから。

 介護士さんが世話しなく動いている。

「今日の夜勤、やばいわ。フロア移動したせいで、不穏な人多すぎ。」

「横山さん、ほとんど夜寝なくてマンツーだったよ。腕、めちゃくちゃつねられたわ。赤くなってる。日勤帯の人寝かすなよ。」

「3階のコロナ病棟に人員裂いたから、こっちは手薄なんだよ。はあー。」

 みんな疲れているようだ。

「ちょっと、ちょっと、西城さんが転んじゃったの。」

 と、吉井さんのしわがれた声が聞こえた。

 介護士が走って向かう。

「ナース呼んで。」

 大きな、介護士の叫び声が聞こえる。

 ナースが走って現場に向かった。西城さん昨日はしっかり歩いていたのに…大丈夫かしら。西城さんは吉井さんと五十嵐さんの部屋で倒れていた。

「五十嵐さんの荷物を運ぼうとして転んじゃったのよ。昼間、職員が来た時にやるからいいって言ったのに。」

 吉井さんが、眉間に皺を寄せて言う。

 西城さんは、苦しそうに横たわっている。看護師が血圧を測ったり痛い場所を確認している。右足と右手首が痛いようだ。介護士が車いすを持ってきて、2人がかりで乗せると処置室につれていった。

 職員がいなくなった部屋で吉井さんがぼそっとつぶやいた。

「五十嵐さんには注意した方がいいわね。」

 

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