第12話 テスト

 西城さんの転倒なんか、みんな忘れたかのように、みんな普通にお茶を飲んで席に座っている。関心がないのか、忘れてしまったのかわからない。ここの人たちは普通の人とは違うから。

 席で新聞を読むことにした。新聞の表紙はコロナの患者が増えているって話題よ。ずっと、この話題ばかり。まったく、大変な時代ね。

 読んでいると、職員がやってきた。

「こんにちは。作業療法士の山田です。眼鏡なしで新聞を読めるなんてすごいですね。」

 この女性はにっこり笑うと、私と目線を合わせて話し始めた。

「今日からリハビリが始まります。最初の3ヶ月は毎日リハビリがあります。それ以降は一週間に2回になります。よろしくお願いします。今日は、簡単なテストをさせて下さい。」

「はい、わかりました。」

 山田さんは私の車椅子を押して、廊下の端に連れて行った。

「本当だったら、リハビリ室でテストをするんですが、コロナが流行っていて、リハビリ室が使えないので、こちらで失礼します。」

「はい。」

 私は、何のテストをするのかしら。

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