第2話 延寿庭
ここまで、来るまでも色々あったのよ。まあ、それは、おいおい話すとして、今日起きたことを話すわ。
娘の運転する車で病院から老健に来たの。
建物に入ってすぐに、ビニールエプロンとビニール手袋にマスクをつけた職員がやって来たのよ。それで、すぐに検温して手にアルコール消毒されて。今までつけていたマスクをゴミ箱に捨てて、新しいマスクを渡された。コロナが流行っているのはわかるけど、私は、ばい菌じゃないんだからね。
娘は、書類の入った封筒を持つと、
「お母さん、頑張ってリハビリしてね。私は、ここの職員さんとお話があるからまたね。」
と言って、別の部屋に行ってしまった。
車いすに乗ているので職員に車いすを押してもらい、建物の奥へと進む。途中、中に入っている人とすれ違う。今日から、この人達と一緒にいるのね。
顔もよくわからない職員につれられて、部屋に案内された。個室で病院よりも広い部屋。窓からは、畑と雑木林が見える。窓を見ていると職員が言った。
「この部屋から見える朝日、とてもきれいなんですよ。」
「そうなの。それはいい部屋ね。」
カーテンで仕切られた病院と違って居心地はよさそうだ。
部屋に職員といると、また、職員が追加で3人やってきた。看護師とリハビリする人って言ってたか。名前と職業を名乗るけど、年だからすぐ忘れちゃうのよ。あと、マスクしてるから余計ね。口元も見えないから何喋ってるのかよくわからないの。
何か、しゃべった後に、背の高い男の職員が耳元で
「動作をみさせて下さい。」
といった。
車いすからベッドへ移ったり、トイレにいったり、廊下を車いすでこいで移動したり、あれやれこれやれ言われて、ようやくやったわ。一通り終わると、食事をする場所に案内された。大きなテーブルが4つ並んでいて、私は一番奥のテーブルだった。テーブルの真ん中には十字型に透明な板がある。
3人座っている人がいる。男が1人、女が2人。いい人たちだといいけれど。
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