☆「神と仙」および「妖、魔、鬼、怪」の区別
ちょっと自分でも調べてて気になったことがあったのでここに書き留めておきます。
中国本土の玄幻小説にたびたび登場する「神仙」または「妖魔鬼怪」という言葉。
字体から前者は人に恵みをもたらす神様に属するもの、後者は人に仇なす妖怪の類だとだいたい予測がつきます。
でもよく神人や仙人、妖怪や妖魔など違う表記がされていることを見かけます。
今までは特に気にせず読んでいたんですよ。だって、意味なんとなくわかるし。
しかし自分で創作するとなるとそうはいきません。
そして複数のサイトで調べてみたんですが……
なんと、
まずは「神仙」から。
最初に現代中国語の話をしておくと、神と仙には明確な意味の使い分けがあります。
神は「神人(意訳:レベチ)」など完全に崇拝する意味で使われる一方、仙は怠け者という軽蔑の意味で使われることがあります。
その由来は中国神話にあります。
中国神話のなかでは天上の世界は天帝、すなわち天の皇帝が治めていることになっています。
とはいえ、彼ももちろんひとりで天地万物を管理することはできません。
そこで必要とされたのが、他の神々の存在です。
封神(神に任命)された者は天庭(天の宮廷)に属し、天帝の仕事の補佐を行います。
彼らは決まった仕事があり、定時に出勤する必要があり、天の規則を厳守しなければいけません。
まるで公務員みたいに。
一方で仙は主に修行や仙薬による鍛錬をしている者たちで、神に比べて随分とのびのびしています。
ちなみに人だろうと人ならざる者だろうと、自分の目指す先に向かって修行中の者は皆この仙に属します。
天界においてはまだ未熟なので、天帝から与えられた仕事はありません。
簡単にまとめると「神」は明確な地位があるビジネスマン。
「仙」は修行メインのフリーターってところでしょうか。
天上の話はそんなところで、次は「妖魔鬼怪」の違い。
これらの言葉は古来から邪悪な人や物を指す言葉として使われてきましたが、実は大きな違いがあるんですね。
まずは妖のお話から。
妖は複数の種族が集まった集団の総称を指す言葉です。
一般的にこの自然界に属する人以外の物で、特殊な術式を身につけられるまで修行し、人に変化することができるものを言います。
狐妖、狼妖、樹妖、風妖……などなど。
中国の伝説に出てくる怪物に実在する動物モチーフのものが多いのは、たぶんそういうこと。
ちなみにこの妖も修行して神仙になることができます。
彼らが特に重要視している修行法は妖術と変化術です。
なかでも優秀で、修行を極めようとするものを「妖仙」と呼んだりもします。
代表的なのは『西遊記』の孙悟空。
この「妖仙」を超え、人々に神として崇められるまでの力を持つようになったものを「聖」と言います。
これ以上ランクアップすることはありません。
代表的なのは中国神話中の創造主、女媧とかです。
次に魔のお話を。
日本語でも「魔が差す」と言いますが、中国語も同じように使うことがあります。
魔はどちらかというと種族よりも状態を指す言葉だという認識です。
道理を悟ることなく、目先の利益ばかりに気を取られる者。
つまりは生まれつきの種族が人であれ妖であれ、悪道に堕ちればそれは魔となるのです。
次は鬼のお話を。
日本で鬼といえば角が生えている怪物を連想しますが、中国ではまったく違う意味です。
人や妖が身体という器をなくし、魂だけの存在になったものを指します。
いわゆる幽霊です。
幽霊は一般的には冥界へ行って前世の行いで裁判を受けて輪廻転生していくものですが、例外もあります。
なかには複雑な事情があって生まれ変われない者もいて、それらは生きている人を殺して魂を吸い取ったりして強くなっていきます。
最後に怪のお話を。
怪というのは実は妖の下位種のようなもので、名前は違うけど同じ種族になります。
まだきちんとした形をとることができず、力も少なく、自我も薄いため知能も低いです。
古代の人々は彼らを醜く獰猛な生き物だと思っていたため、怪物、略して怪と呼んでいたのです。
同族の妖とひとくくりにされて妖怪と呼ばれることもありますね。
今回はここまでです。
「神と仙」および「妖、魔、鬼、怪」の区別、おわかりいただけましたでしょうか。
これからもこんな感じで、中国の創作界隈における創作論もどきを書いていこうと思います。
(記:2022/12/18)
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