はじまり

 神は世界を七日間で作ったけれど、どうして七日間で作ろうなんて思ったのだろう――思ってしまったのだろう。僕は不思議で仕方がない。

 そもそも「作ろう」と思ったきっかけはなんだったか。一人でいるのが寂しかった? それとも気紛れ? なんにせよ神は天地を作り、昼と夜を設けて、大地だの海だの太陽だの月だのも作って、人間その他もろもろも生み出した。

 七日目は休んだのだから、実際のところ働いたのは六日間であり、七日間で作っていないんじゃないか、みたいな指摘はひとまず置いておいてほしい。

 人類は順調に繁栄した。けれど、世の中は平和とは言い切れないもので。あちこちで戦いが起き、それが終息したと思えば、別の地で大砲が轟く。平穏な瞬間はどこにもない。

 こんなことなら、もっと時間をかけて世界を――というか、人間を作ればよかった。こんなに争いが絶えないのは、急いで世界を作ろうとするあまりどこかに欠陥が生じたからかも知れない。

 まったく。当時の僕はなにを焦っていたのだろう。決して怠惰に世界を作ろうとしたわけでは無い。僕なりの理想を掲げ、それに従って動いたはずなのに、心のどこかで「急いで作りたい」と思ったから、作業のどこかしらで手を抜いた可能性も否めない。

 はじまりがあれば終わりがある。人間の中には、神が世界の終わりに審判を下す絵を描いた者がいるそうだけれど、それを現実にしても良い頃合いか。

 そうしてまた、世界を一から作り直そう。

 今度こそ失敗しないように。

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