予感

 悪い予感ってのはだいたい現実になる。

 一昨日は「なんかカラスがいっぱい飛んでて不気味だな」と怖々自宅を出た途端、肩に糞を落とされた。次の瞬間、道ばたに放置されていた犬の糞を踏みつけて転び、日向で寝ていた猫が驚いて俺に蹴りかかってきた。まさに踏んだり蹴ったりである。

 昨日は職場の上司がやけに不機嫌で、貧乏ゆすりが尋常じゃなかった。そこに空気の読めない新人がやってきて、上司にくだらない世間話なんかしたものだから最悪だ。新人の教育係は俺だったから、絶対怒られると思っていたら、案の定上司に呼びだされて日が暮れるまで怒鳴られた。

 どうしてこうも、悪い予感ばかりが当たるのだろう。たまには良い予感の方が当たってもいいと思うのだけれど。

 今日も今日とて悪い予感しかしない。ベランダから空を見上げれば、黒く重たそうな雲が広がっている。天気予報は快晴を伝えていたはずなのに。

 寒気がして何度も腕を擦る。風邪を理由に欠勤しようとしたけれど、念のため熱を測ったら普通に平熱だった。

 外を歩きながら何度も空を仰いで、ああ、今にも雨が降ってきそうだとため息をつく。

 いや、もしかすると雨以外のものが降ってくるかもしれない。鳥の糞ならまだしも、蛙とか魚だったら嫌すぎる。

 その時、べちゃ、と濡れた音とともに肩になにかが落ちてきた。

 また予感が現実になったらしい。己の想像力を呪いながら肩に触れて、思わず悲鳴を上げた。

 俺の肩に、動物の腸と思しきものが乗っていた。

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