第2話 干渉 part2
平日放課後。
HRの終礼がおわると生人達が立ち上がり動き出す。
スマホを覗くと通知が一件きていた。送信主は彩折か。
「そういえば、ずっとマナーモードしてたから全く気づかなかった。ええとなになに」
『少し遅くなりそう。だからいつも寄ってる同人ショップに17時に待ち合わせね』
はぁ。
またこれか。
彩折のクラスはすぐ隣なのだが、こういう遅くなるメールをするという事は居残り……補習が確定したということ。
彩折は頭は普通な方なのだが、毎回のように授業の補習を受けてしまっている。普段は2人で下校するのだが、なぜいつもこうなるのか習いたいぐらいだ。
「また補習かよ。いつものところっていうとアニナイトだよな?」
アニナイト。彩折と俺がよく訪れる人気同人ショップ。
本からフィギュア、アニメの玩具などたくさんある。俺達が口にする"いつも"というのはこのショップ他ならない。
返信のボタンを押し、カーソルが点滅し始め文を打ち始める。
内容は……そうだ励ましの言葉でも送っておこうか。
『お前またヘマしたのかよ。ったく仕方ないな。好きな同人誌買っておくから頑張れ』
こういうことすると彩折はなにかと喜び渇が入る。まあ資金的に余裕は十分あるので全く問題ない。
彩折は同人誌やオタ系の物のことを1度語り始めると口が止まらなくなる。なので俺は散々そういうオタクの話を彼女に昔から何度も聞かされているので、彩折の好きな作家、本、アニメは既に把握済みだ。そう今欲しがっている本も勿論知っている。
「ふん、彩折後悔しろ。俺に恩を作るという罪をな」
送信のボタンを押し。
ピコン。
送信完了。
勉強中のせいかまだ俺の送った文には既読がついていない。
そのうち見てくれるだろう。
彩折が送ったメールの時刻は……15時5分。終礼前じゃないか。
送信がおわるとスマホの電源を切り、カバンを背負い立ち上がる。
「ノベルの新巻買い忘れてたしついでに済ませておくか」
小歩で廊下を歩きながら独白に耽りながら、俺は学校を出た。
◉ ◉ ◉
アキバ中央通り。
平日にも関わらず行き交う人が大勢といる。
駅周辺にある、家電製品類の置かれた場所には、ジャンクPCのパーツを漁る人が津々と掻き漁る姿が。大通りの同人ショップには、巨大なアニメポスターを撮す人や手に取るフィギュアをまじまじと見る者もいた。
「平和すぎるねぇ。平和すぎて時間が有り余るほどに退屈だけど」
一瞥しながら、賑やかアキバをつき歩く。
もう少しで彩折と待ち合わせしている場所に到着だ。
「? あの人は」
俺が歩いていると長髪をした、顔が綺麗に整った女性が人混みに紛れてふらふらと歩いていた。背丈は俺より若干高め。
するとポケットからスマホを取り出して…………って歩きスマホするなよ。
そんなことを思いながら通り過ぎようとすると。
バタン。
その人とぶつかった。
「いたた。私としたことが…………って君大丈夫?」
「…………あぁ」
ぶつかったのにも関わらず無理に激怒することもなく、むしろ自分の事は後回しに俺の方へと近づく彼女。中腰になりながら目線を俺に近づけ…………いや近い近い。
手を差し伸ばしてくれていたので俺をそれに応じ。
「ありがとう。悪い俺が周り見てなかったせいで」
彼女は首を横に振り。
「ううん、それはこっちだって。ちゃんと周りは見ないとだね」
笑顔が似合う彼女は、頭を掻きながら答える。すると俺の服をジロジロと見回し始め、うーんと唸り考える様子を向けてくる。
「あ、あの何か?」
「………………あ、ごめん。よーくみたら君私と同じ学校の生徒じゃない。……ふむふむ見た感じ下級生かな?」
「そうだけど、ってやっぱり先輩だったのか」
俺に興味津々な彼女――先輩は、俺を薄目で見つめる。なんだよその魅惑な目つきは。
「私は2年。君は?」
「1年だけど」
あまり敬語とかは慣れていない。
いままでに目上の先輩達はこうして真面に話したことなかったからな。
「そうか、かわいい後輩ちゃんだね」
「あ、ちょ待てって!」
先輩は後ろで腕を組みながら俺の前から去って行こうとする。それを制するように一旦呼び止めると。
先輩はぐいっと顔をこちらに向け、口を歪め艶然と微笑み、人差し指を口に当てウインクさせ。
「ごめんね、ちょっと寄るところがあるの。……君とはもうちょっと話したいけど……それじゃあね」
と言い残しながら先輩はステップを踏みながら去って行った。
変わった上級生もいるんだなあ全く。
「あの先輩、変わり者過ぎないか?」
名前をお互い名乗らず別れてしまったが……だから何者なんだあの先輩。
待ち合わせの時間まで30分の尺がある。スマホを開きまた何かアプリでも探そうとした。
ロック画面を解除し……アプリの溢れかえっているストアを…………と。
「? ……………………なんだこれ」
いつも見るスマホのホーム画面。
何の変哲もなく、ごく普通などこにでもある画面である。
様々なアプリを入れてはいるのだが、1つだけ見覚えのない真っ黒なアイコンをしたアプリがそこにあった。
「
ウイルスソフトみたいな何かか? 胡散臭い高額請求してきそうな物だと色々と億劫なのだが。
念入りこのアプリをストア上で検索することにする。
「
検索結果は。
「件数……0だと?」
1文字も間違えず打ち込んだ。
だが、その結果でヒットした件数が0なのである。既に削除されているアプリなのかもしれないが……。
「一応開いてみようかな」
あまり開かないほうがいいとは思う。がしかし気掛かりでしょうがない。
相手側の思う壺に乗せられているだけかもしれないが……それでも俺は。
「………………っ」
指を僅かにそのアプリに震わせ戸惑いながらも…………軽くタップした。
「?」
起動させると……画面は真っ黒。何も映らない。
数分待ち続けるものの結果は変わらずで、ひたすら俺が持つスマホは真っ暗な画面を映している。
漆黒で塗りつぶされた……言うなればそれはアプリ自体が"無"そのもの。何もなくなった虚無の世界。
「ただのクソアプリかな。……よく分からないからアンストしよ」
ホームに戻り、そのアイコンを長押しする。……アンインストールしますかの画面が出てきたので、下の選択肢にあった『はい』を押す。
――がしかし。
『アンインストールできませんでした』
「なぜ…………だ?」
幾度か試してみるが結果は変わらずで、その謎アプリは俺の画面上に居残り続けた。……まるで何かを待ち続けるようなそんな感じがして。
そろそろ時間が迫ってきたので一旦そのアプリは後回しにし、スマホを切り動き出すことにした。アニナイトまで歩いて店内へ。
啖呵切ってあれなのだが、買ってなかったら彩折に何か言われそうだ。約束は守るそれが俺の心構えである。
「ありがとうございました~」
外に出て買った同人誌の入った袋を片手にぶら下げ、考え込む。
黒いアプリ。……黒い画面そして無。
いくら熟考してみても手つかずで、謎は深まる一方だった。
「一体なんだったんだあのアプリは」
頭の中でそんなことを考えていると、向こうから手を振る見慣れた馴染みの姿がそこにあった。
「おーい櫂翔くーん!」
駆け出して近寄ってくる。
息を切らしながら俺の方に居立ち疲れ果てた様子で言ってくる。
「はぁ、はぁ、本当に買ってくれたんだ……。あ、ありがとう」
「疲れてるなら無理して走るなよ。さあ彩折も来たし一緒に帰るか」
「う……うん!」
いつもの帰り道。
変わらない帰路。
そんな変わらない道を俺と彩折は辿り。
「今日もありがとうそれじゃあね。また明日」
「あぁ気をつけて帰れよ」
彩折を見送ったあと、俺は帰り際にもあのアプリのことを考えていた。
そうRISTER MANAGEMENT。この存在を。
――俺はこのとき知らなかった。アプリが原因で様々な運命そして問題に巻き込まれていくことに。
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