第14話 さよならMedia=II Generation Part2

アブゼリードラは、元の姿に戻る。


「類清が…勝った…」


「あいつ…」


瞳彩アイリスはぐったりとして動かない。


「終わった…。

やっと…」


類清は疲労から、その場にしゃがみ込む。


「まだ終わりではない」


アブゼリードにはまだ緊張感があった。


「え?…」


傷だらけの瞳彩アイリスが立ち上がる。


「人間ごときに、また深手を負わされるとは…。

こうなりゃ、最終手段だ!

三漂群の能力はまだある!」


「何!?」


「今の勝負で十分なエネルギーは集まった。

負けはしたが、能力発動には十分だ…。

海域かいいきべる結界 二千トゥー・サウザンド】の能力。

それは、五仕旗そのものの抹消!」


「五仕旗の抹消!?」


「五仕旗に関わるすべてのものを消滅させ、世界中の人間から、モンスターと五仕旗の記憶を消し去る!

お前ら人間は五仕旗を生み出した。

今、世界中のモンスターはここに集まっている。

人間がモンスターの存在を認知している限り、お前らはあらゆる手を使ってモンスターを復活させ、戦いの手段として利用してくるだろう…。

だがその記憶を奪えば、次に俺が目覚めた時、お前らにはもう俺と戦う術は残っていない!

その時こそ…。

お前ら人間が記憶を抱いたまま、モンスターを奪われ苦しむ姿を思い描いていた俺に、こんな力を使う場面はないと思っていたが、何もできず眠りにつくよりはいい!」


「これは、人間を憎む瞳彩アイリスが執念で発言させた能力だとでもいうのか!」


闘争組換アサルト・ツートーン】で生じた光の柱に再びヒビが入る。

それを見つめるアブゼリード。


「類清。

急で申し訳ないが、ここでさよならだ」


「え…お前、何言ってんだよ」


「あの柱が壊れれば、君達まで記憶を失ってしまう。

そうなれば奴の思う壺だ」


「まさか…」


「みんな、いくぞ!」


類清のデッキのモンスター、青充の飛翔ひしょう照蜴しょうきが飛び出し、ヒビに向かっていく。


立ち去ろうとするアブゼリードの腕を類清がつかむ。


「おい!」


「止めてくれるな!」


「…」


「君達の記憶が残っていれば、きっとまた、モンスターを復活させることができる。

そのために私達がやらなければならないことはたった一つ」


「でも…」


「これ以上、私を困らせるな。

いつも君のわがままに付き合わされて疲れていたんだ。

少し休ませてくれ」


「うるせぇ。

お前いつも、俺が疲れたって言うと怒ってたじゃねぇか」


「ならばお互い様だ。

それに考えてもみろ。

世界中のモンスターが消え、私が生き残っても、私の居場所などないだろう。

悪魔か龍かの議論どころではない。

記憶の消えた人間からすれば、私の存在自体が異様なのだからな」


「…」


「もう時間がない。行ってくる…」


アブゼリードが飛び立つ。


「どこへでも行け!

二度と帰ってくんな!

お前みたいにおしゃべりなモンスターは迷惑なんだよ!」


龍は光の中に消えていった。

類清は立ち上がることができない。


瞳彩アイリス起動聳スターターカクから光が流れ込む。

瞳彩アイリスが最後の力を使うと強烈な光が起こり、何も見えなくなった。

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