第14話 さよならMedia=II Generation Part3

目を覚ました時、類清は病室にいた。

全て夢であったと信じたかったが、そうではないと、まだ回らない頭ではっきりと理解していた。


デッキには明らかに量が減ったカード達。

まるで最初から存在していなかったかのように、モンスターカードが姿を消していた。


**********


瞳彩アイリスの目論見通り、世界から五仕旗とモンスターの存在は消えた。

あの時PARSKR IIパースクル・ツーにいた者と、隣接するCentralセントラルにいた職員達を除いて。


モンスターや五仕旗が関わっていたものは、全てそれらが関わらない形で修正され、Centralセントラルは多方面で活動する団体という位置づけになっていた。

何も知らない人間に、一連の騒動の話を持ち出しても相手にされるはずがない。

瞳彩アイリスの起こした事件も、世界中が見ていた類清と瞳彩アイリスとの一戦も、誰も知らない。


青充がエレベーターの前に立つ。

開いたドアの先には風潤がいた。


「おはよう青充君」


「おはよう」


風潤は気に留めていたことを質問した。


「あのカード達、どうだった?」


瞳彩アイリスは12枚のカードに別れていた。


風潤が家で聞かされていた話では、瞳彩アイリスは元々七枚のカードであった。

それが一枚のカードになり、果地家で保管していた。


七枚のカードには使用者が五仕旗で負け、カードが奪われたとしても、ロックがかかり簡単には使えないように仕掛けがしてあったらしい。

その効果が今の瞳彩アイリスにも持続しているか気がかりだったのだ。

万が一、瞳彩アイリスのカードが世に放たれた場合、そのカードを自由に使われては混乱を招く。


「いや、ロック機能は使えないようになっていた。

こちらで改めて設定しようとしたが、拒んでどうにもならない。

強力な力を一人の人間が使えるようになれば、そいつが残るカードも集めやすくなる。

奴が復活のために、倒れる寸前にそこまで手を回したんだろう」


「それじゃあなおさらちゃんと管理しないといけないね」


「そうだな。

しかし、人々の記憶を消しながら、次なる復活の準備まで進めるとは。

あいつの執着心には敵とはいえ頭が下がる…。

ところで、類清はどうだ?」


「元気…そうだよ。

でも、たぶん空元気」


「そうか。

モンスターを失ったショックは、あいつが一番大きそうだからな」


「うん。

アブゼリードと仲良かったもんね」


エレベーターが止まり、ドアが開く。

今日は今後についての会議が開かれる日。

事情を知る本部の者やPARSKR IIパースクル・ツーで勝ち残った者が集められた。


会議室に入ると類清が座っていた。


「おはよう類清」


「おう…」


二人は彼の隣に座る。


それから会議が始まるまで、彼らは一言も発しなかった。

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