第11話 PARSKR II
第11話 PARSKR II Part1
流導類清。
元々はメインステージで行われるショーで活躍するヒーローになりたかったが、デッキのモンスターの姿からヒールを任されることになった。
アブゼリードは、仮に類清のモンスターが悪役を想起させる見た目でなかったとしても、初めから大役を任されることはないと彼を慰めた。
鉱山の国の序盤のエリア。
彼はそのエリアボスになった。
彼はヒールになることは避けたかった。
彼が悪役となり皆に嫌われれば、かつて自身やアブゼリードが受けていたような嫌がらせを、モンスター達が受けてしまうのではないかと懸念していたから。
しかし、現実は想像していなかった方向に向かった。
役とはいえ、自分がした悪事やセリフに皆が喜んでくれる。
目立つキャラクターではないため、特に話題になったり、ファンがついたりするわけではなかったが、悪く言われることもなかった。
これはこれで悪くない。
鉱山の国のラスボスを目指す。
英雄になりたかった彼の当面の目標はそれになった。
ただ相手の機嫌を取って負ければいいのではない。
叩き潰せばいいのでもない。
追い詰めたと思わせた相手には、意外な角度から反撃したり、挫けそうな相手には、悟られぬように隙を作って勝利へ導いたり、色々と工夫した。
昔から手加減することは嫌いだったが、勝利した後の相手の嬉しそうな顔を見ると悪い気はしなかった。
自分が勝った時も、相手の表情に"また挑んでやる"という前向きな意志を感じられた時は熱くなれた。
一度、協調性のないモンスターが暴れたことで、エリアボスの役を追われかけたが、それ以外は概ね好評であり、少しずつだが昇格もしていった。
それなのに…。
あの日、あのモンスターは
そんな奴を放っておくことはできない。
居ても立っても居られず、モンスター達に相談した。
お前達さえ良ければ…。
指定された時間に通ったゲートの向こう、そこは慣れた場所のはず。
それにもかかわらず全く違う感じがした。
**********
<エントランス>
「お前が今回の事件を起こしたのは、
青充が口を開く。
「気づいてたのか。
さすが、副部長だな。
そう。
果地の家から脱出した俺は、偶然
内部を調べると、特別な
モンスターの力ってのは、色々と使い道がある。
産業のエネルギーとかな。
それを欲してる奴は大勢いるだろう。
でも、それを計画したのがお前達
そうは思わねぇか?」
「…」
「俺がここに世界中の強豪を集めたのは、実力のある奴の方がモンスターとの絆が強く、より強い衝撃を生み出しやすいからだ。
暴走する俺を倒そうと、俺の欲する人材がこれでもかと集まった。
それに、五仕旗で発生する衝撃は、単にモンスターの攻撃力で決まるわけじゃない。
そのモンスターを従える人間や戦っているモンスターの力の入り具合、勝負への執着、熱量、そういった要素が大きく絡む。
負荷を加えることで、さらにエネルギーは大きくなった」
「負荷?…」
アブゼリードは過去の戦いを思い出す。
**********
<回想>
鉱山の国でのマインとの勝負。
「これが【プラナネック・ドラゴン】の魔法効果。
このモンスターは1ターンに6回まで、戦闘で破壊されないのだ!」
「はっ!? 6回だと!?」
【プラナネック・ドラゴン】
モンスターカード/魔法部類/固有ターン5/再起系
魔法攻撃力1700
魔法効果:このモンスターは、1ターンに6回まで戦闘で破壊されない。
(6つの首を持つ龍。
首を切っても何度でも再生するので、倒すのに苦労する)
「1ターンに6回って、どうやって倒すんだよ!
こんなもん、ほとんど嫌がらせじゃねぇか!」
「嫌がらせか…」
**********
「ここに来るまでの戦い、カード効果が不自然に強力なものがあった。
あれはお前が細工したのか」
「その通り」
「それぞれの国の王にAIを使ったのもそのためか」
「AI!?
あいつらみんな、人間じゃないってのか!?」
「ああ。
ここへ来る前、
芸術の国で俺が戦った奴も、見た目は人間だったが、倒れた後をよく見ると機械の体だった」
**********
<回想>
芸術の国での
倒れている
「(やはりそうか…)」
**********
「AIを使えば、お前が仕込んだカードを最も効果的に活用し、対戦者に負荷をかけることができるからな」
「そこまで理解してるなんて、本当に優秀なんだな、お前。
まぁ、その優秀さがこの俺を倒すことに関係あるかっていえば、違うと思うけどな」
「(威力調整機能を高めに設定している
威力調整機能をもってしても抑えきれなかった分が類清を襲っていた。
何ということだ…)」
「AIだのシミュレーション用のコンピューターだの優秀な機械が揃ってるんだったら、そいつらに戦わせてエネルギーを貯めることもできたんじゃねぇのか?」
「ところがそうはいかねぇんだよな。
さっきも言ったが、五仕旗で生じる衝撃は戦う奴の精神で大きく変化する。
機械なんかより生物の方が、その辺は比較にならないほど才能があるんだよ。
俺の計画を遂行するためにはどうしてもお前ら人間に手伝ってもらう必要があったわけだ」
「(コンピューターや高性能のAIを使って可能な限り負荷をかけ、生物である俺達に戦わせることで最大の衝撃を生み出させる。
それを
お前は集めたエネルギーを何に使おうとしているんだ!」
「
それは追い追い説明してやるから、とにかく勝負を始めようぜ。
システムが起動する。
「どっちから俺に挑んでくるんだ?」
「類清」
青充が類清に話しかける。
「ここは俺とともに戦ってくれないか?」
「え…」
「悔しいが、一人ずつ挑んでも、奴には及ばない。
そんな気がする…」
アブゼリードがフォローする。
「類清。
青充が頼み込んでいるんだ。
それに、彼の言うことももっともだ。
奴の余裕ははったりなどではない。
危険だ」
「分かったよ。
一緒に戦えばいいんだろ。
その代わり、偉そうに指図するなよ」
「お前こそ、俺の足を引っ張れば、世界中の人間を危険にさらすと思え」
「こいつ、また偉そうに!
帰ったら喧嘩だな、こりゃ」
「2対1か。
いいよ、何人でもまとめてかかってこいよ!
無駄な時間が省けてありがてぇ!
いくぞ!
五仕旗…」
「
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