第9話 型破りな勝利 Part2(ゲーム)

流導類清 vs コーナー


TURN1

(類清のターン)


「先攻はもらう。

【調達するゴブリン】を召喚」


【調達するゴブリン】

モンスターカード/通常部類/固有ターン1/射手系

通常攻撃力500

通常効果:このモンスターが場にいる限り、自分の場のモンスターは、自分の場の装飾系カード1枚につき攻撃力が500上がる。

(材料の調達を主な仕事としているゴブリン。

珍しい素材に対するアンテナを常に張っている)


手札

類清:4枚

コーナー:5枚


TURN2

(コーナーのターン)


「俺のターン。

開幕を無視する獣パススルー・ザ・ゴング】を召喚」


開幕を無視する獣パススルー・ザ・ゴング

モンスターカード/打撃部類/固有ターン1/格闘系

打撃攻撃力300

効果なし

(ルールに従うことが大嫌いな獣。

試合開始の合図がある前に、先手を繰り出す)


荒々しい獣が現れた。

何が気に入らないのか、ひどく興奮している。


「ターン終了」


「怖そうなのが出てきたな」


「攻撃力300。

こちらの攻撃を誘っているのか…」


手札

類清:4枚

コーナー:4枚


TURN3

(類清のターン)


「俺のターン」


カードをドローする類清。


「類清、ここは警戒した方がいい。

相手はこの国の王だ。

何の意図もなく攻撃力300のモンスターを召喚するはずがない」


「ああ。

攻撃した瞬間、攻撃力を上げたり、特殊カードで対抗したりってのは考えられるな。

それなら…

手練てだれのバフォメット】を召喚!」


手練てだれのバフォメット】

モンスターカード/通常部類/固有ターン3/射手系

通常攻撃力1300

通常効果:モンスターに攻撃する場合、発動可能。

このモンスターの攻撃力は戦闘中のみ、戦闘する相手モンスターの固有ターン×100だけ上がる。

このモンスターは、装飾系カードの効果で指定されていない場合、戦闘ダメージを与えられない。

(黒を基調とした迷彩柄のバフォメット。

武器や道具を使いこなすだけでなく、元々の能力も優れている)


「(こいつの攻撃力なら、あいつのモンスターを倒すのにも十分だろ。戦闘ダメージを与えられないのは惜しいが、【ゴブリン】の攻撃が失敗した時の代打としては心強い!)

バトル!

【調達するゴブリン】で攻撃」


【調達するゴブリン】通常攻撃力500

     vs

開幕を無視する獣パススルー・ザ・ゴング】打撃攻撃力300


【ゴブリン】が背中から取り出した道具で叩くと、【ゴング】はあっさりと破壊されてしまった。


「うっ…」


コーナーの累積ダメージ:500(0+500)


「何もなかった…」


「何もなかったな。私の取り越し苦労だったか?」


コーナーに焦りは見られない。


「どうした?

俺にダメージを与えられたんだぞ。

もっと嬉しそうにしろよ」


「(あいつ、随分余裕そうだな…)

ターン終了だ」


手札

類清:4枚

コーナー:4枚


TURN4

(コーナーのターン)


「俺のターン。

特殊カード【木漏日こもれび】を発動。

このゲーム中に、攻撃力500以下で効果のないモンスターを召喚している場合、2枚をドローできる」


木漏日こもれび

特殊カード/駆動系

発動条件:このゲーム中に自分が攻撃力500以下で効果のないモンスターを召喚している場合。

効果:2枚ドローする。


カードをドローするコーナー。


コーナーの手札:6枚


「俺は手札から【無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】を召喚!」


無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】

モンスターカード/打撃部類/固有ターン3/格闘系

打撃攻撃力600

打撃効果:???

(状況に応じた様々な戦法を習得した戦士。

勝てれば何をしてもよいという精神で戦う)


怪しい雰囲気の戦士が召喚される。


「さらに特殊カード【型破かたやぶりな闘技場とうぎじょう】を発動!」


大きな音を立て、両者の足下からリングが現れる。


型破かたやぶりな闘技場とうぎじょう

特殊カード/残存型/格闘系

発動条件:自分ターンまたは相手ターン中に、カードの発動が可能。

効果:???


「これは…」


「続けて特殊カード【一撃】!

モンスターの攻撃回数を1回増やす。

続けて【双主演詠唱ダブルキャスト・キャスター】を重発動リリアクト

同じ効果を2回使う!」


【一撃】

特殊カード/追撃系

発動条件:場にモンスターがいる場合。

効果:モンスター1体のこのターンの攻撃回数を1回増やす。


双主演詠唱ダブルキャスト・キャスター

特殊カード(重発動リリアクト)/詠唱系

発動条件:特殊カードが発動した時、それに対して発動可能。

効果:このカードはそのカードと同じカードとなる。

(他のプレイヤーの場で特殊カードが発動した場合は、効果処理前にそのプレイヤーの場に移動する)


「よって、【アラカルト・ヒール】はこのターン3回攻撃が可能!」


「3回攻撃!?

でも、攻撃力600じゃ、倒せるのは【ゴブリン】だけ…」


「俺はそんなのを狙ってるんじゃねぇ!」


「何?」


「バトル!

無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】で攻撃!」


【アラカルト・ヒール】は類清のモンスター達の間を高速で抜けると、類清に近づき殴りかかった。


「うわっ!」


「類清!」


類清の累積ダメージ:600(0+600)


「どうなってんだ?」


「【アラカルト・ヒール】は攻撃力1000未満の場合、相手プレイヤーに攻撃してダメージを与えることができる!

モンスターなんかいちいち相手にしなくても、お前にダメージを与えることができるんだよ!」


無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】

モンスターカード/打撃部類/固有ターン3/格闘系

打撃攻撃力600

打撃効果:自分の場のモンスターがこのモンスター1体の場合、このモンスターは相手プレイヤーに攻撃できる。

(勝敗判定はこのモンスターの勝利、相手プレイヤーの敗北とし、このモンスターの攻撃力が戦闘ダメージとして与えられる)

ただし、このモンスターの攻撃力が1000以上の場合、この効果を適用して相手に与える戦闘ダメージは0になる。

(状況に応じた様々な戦法を習得した戦士。

勝てれば何をしてもよいという精神で戦う)


「くそっ!」


「このままダメージを受け続ければ、あと4回で我々は敗北する!」


「4回?

あと2回で十分だよ!」


「何だと?」


リングに備えつけられた大型モニターに、"1"という文字が表示される。


「この数字は一体…」


「これが【型破かたやぶりな闘技場とうぎじょう】の効果。

このリングの上では、相手プレイヤーは累積ダメージが3000以上になっても敗北しない」


「は?

じゃあ、お前が俺にダメージを与える意味はないじゃん」


「話は最後まで聞け。

その代わりにお前は、ダメージを3回受けた時点で累積ダメージに関係なく敗北する!」


「!?」


型破かたやぶりな闘技場とうぎじょう

特殊カード/残存型/格闘系

発動条件:自分ターンまたは相手ターン中に、カードの発動が可能。

効果:このカードが場にある限り、このカードを従えるプレイヤーから見た相手は、自身の累積ダメージが敗北値以上になっても敗北しない。

このカードを従えるプレイヤーは、自身から見た相手に戦闘ダメージを3回与えることでゲームに勝利する。


「さぁ、次いくぞ!

2回目の攻撃!」


再び戦士は類清に近づき、今度は蹴りを入れた。


「うわっ!」


類清の累積ダメージ:1200(600+600)


「あと一撃で終わりだ!

3回目の攻撃!」


「(くっ…これで終わりなのか?)」


【アラカルト・ヒール】が近づいてくる。


「類清!

逓増ていぞう演舞ダンス】を発動しろ!」


アブゼリードの突然の指示に驚く類清。


「えっ?

ああ…【逓増ていぞう演舞ダンス】を発動!」


【アラカルト・ヒール】は類清への攻撃を止め、その場で暴れ始めた。


「どうした? 早く攻撃しろ!」


しかし、戦士は動き疲れ、倒れてしまう。


「どうした!?」


「類清が発動した【逓増ていぞう演舞ダンス】の効果だ。

このターンに成立した戦闘1回につき200、場のモンスター1体の攻撃力を上げる。

このターンに成立した戦闘は2回。

この効果により【アラカルト・ヒール】の攻撃力は1000になった」


逓増ていぞう演舞ダンス

特殊カード/演舞系

発動条件:このターン、戦闘が1回以上成立している場合。

効果:場のモンスター1体の攻撃力は、このターンに成立した戦闘回数×200上がる。


無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力1000(600+200×2回)


「お前のモンスターは攻撃力が1000以上の場合は、攻撃してもダメージを与えられないのだったな。

したがって、類清へのダメージは0になった」


類清の累積ダメージ:1200(1200+0)


舌打ちするコーナー。


「いやー、アブゼリードのおかげで助かった。

ありがとな」


「君が取り乱した時に支えるのが、私の仕事ではないか」


「そんなに取り乱してねぇよ」


「くだらねぇ手を使いやがって!

ターン終了だ!」


手札

類清:3枚

コーナー:2枚


TURN5

(類清のターン)


「俺のターン」


ドローカードを確認する類清。

じっと見つめて動かない。


「どうした? 何かあったのか?」


「お前を召喚できればな…」


類清の累積ダメージ:1200


「奴がダメージを与えることに重きを置いていない以上、仕方ないだろう。

どれどれ…」


アブゼリードが手札をのぞき込む。


「なるほど。

これなら悩んでも仕方ないな」


「俺、こいつ苦手なんだよな」


「私にとっては大事な仲間なんだ。

仲良くしてくれ」


「"仲良くしてくれ"っていったって、向こうが嫌な感じだから悪いんだろうが。

こいつが大暴れしたせいで、俺、エリアボス外されそうになったんだぞ!」


「でも大丈夫だったじゃないか。

今回もきっと大丈夫さ。

それに、ここは彼に頼るしかないだろう」


「…それもそうだな。

分かったよ」


類清は手札1枚を手に取る。


「俺は【魔鍛工まかこう ボイロヴン】を召喚…」


魔鍛工まかこう ボイロヴン】

モンスターカード/魔法部類/固有ターン5/加工系

魔法攻撃力1500

魔法効果:???

(灼熱の炎でモンスターを痛ましい姿にする悪魔。

仲間を見境なく犠牲にする姿は、「まさに悪魔」とも「鬼だ」とも評される)


アブゼリードと同じくらいの大きさの悪魔が現れる。


「久々だな」


「ああ。久しぶり」


「その様子だと、今にも敗北という感じだが」


「だからお前みたいな奴の力も借りないといけないんだよ」


「俺は別に、お前が負けようと構わないがな。

そんなことより、今日はこいつらと遊んでもらえばいいのか?」


【ボイロヴン】は【バフォメット】と【ゴブリン】を指差した。

彼らは悪魔を嫌そうに睨んでいる。


アブゼリードがボイロヴンに言い聞かせる。


「そういう言い方はやめろ。

同じデッキの仲間…」


「お前のそういうところが鼻につく。

要するに、あいつを倒せばいいんだろ?」


「ああ。

相手のモンスターの攻撃力は低いが、効果でプレイヤーを攻撃してくる。

このリングの効果で、あと一撃くらえば終わりだったが、何とか防いだ」


「モンスターをスルーして攻撃をしかけてくるのか。

気に入らねぇな。

力の差を思い知らせてやる」


「頼む」


「だがその前に、類清!」


「何?」


「ここからは俺がターンを進める」


「は?」


「お前なんかにいちいち命令されるのは癪だ。

お前が俺に従えば、協力してやるよ」


「俺だってお前なんかに頼みたくねぇんだよ!」


「だったらこのまま負ければいいんじゃねぇか?」


ピリピリする二人にアブゼリードが割って入る。


「今は言い合いをしている場合ではない!

類清、ここはボイロヴンに任せろ」


「分かってるよ…」


「馬鹿が黙ったところで、ようやく始められる」


ボイロヴンがさらに挑発するが、類清はそれ以上言い返すのを堪えた。


「おい! 何喋ってんだ!

早くしろよ!」


コーナーは痺れを切らして怒鳴った。


「悪かったな、待たせて。

詫びとして、ここからは退屈させない」


ボイロヴンはそう言うと、ターンを再開した。


「バトル!

この俺で、そいつを攻撃!」


魔鍛工まかこう ボイロヴン】魔法攻撃力1500

     vs

無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力1000


魔鍛識クレバー・ボイルポイント!」


悪魔が火球を放つ。

戦士はそれを受け、倒れてしまった。


コーナーの累積ダメージ:2000(500+1500)


「【しずまらぬ闘志とうし】を発動!

【アラカルト・ヒール】を復活させる!」


しずまらぬ闘志とうし

特殊カード/気迫系

発動条件:モンスターが破壊された場合。

効果:そのモンスターを自分の場に復活させる。


【アラカルト・ヒール】は立ち上がった。


無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力600


「さらに、【覇気のツボアンビシャス・プレッシャーポイント】!

自分の場のモンスターの数が、相手より少ない場合…」


コーナーの場:

無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力600


類清の場:

【調達するゴブリン】通常攻撃力500

手練てだれのバフォメット】通常攻撃力1300

魔鍛工まかこう ボイロヴン】魔法攻撃力1500


「相手の場のモンスターの攻撃力の合計が、ターン終了時まで自分モンスターに加算される!」


覇気のツボアンビシャス・プレッシャーポイント

特殊カード/指圧系

発動条件:自分の場のモンスターの数より、相手の場のモンスターの数が多い状態で、自分の場にモンスターが召喚された場合。

効果:ターン終了時まで、召喚されたモンスターの攻撃力を、相手の場のモンスターの攻撃力の合計分上げる。


無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力3900(600+500+1300+1500)


「(これで、奴はもう手出しができない。

そしてこの効果はターン終了時に切れる。

次のターン、攻撃力600に戻った【アラカルト・ヒール】でもう一度流導類清に攻撃すれば、カウント3となり俺の勝ちだ!)」


「それが何だってんだよ」


「負け惜しみか?」


「お前、いつもモンスターを使って相手を殴ってるんだろ?

たまには自分も食らってみたらどうだ?」


「は?」


**********


<地下の一室>


対戦の様子を瞳彩アイリスとフォーカスは見ていた。


「奴ら、いよいよ俺に辿り着きそうだな」


瞳彩アイリスは嬉しそうだったが、フォーカスは真逆だった。


「(あいつが勝てば、瞳彩アイリス様が…)」


敗北した以上、勝手なことをしては瞳彩アイリスに申し訳ないと今まで耐えていた。

しかし、敗北したからこそ穴を埋めないのは、それはそれで申し訳ない。


フォーカスは瞳彩アイリスに悟られぬよう、その場を立ち去った。


**********


「俺の魔法効果を発動!

急温鍛錬スキャッター・ベリアル!」


【ボイロヴン】が両手から火球を放つ。

それは味方である【ゴブリン】と【バフォメット】に直撃した。


「何をしている…」


【ボイロヴン】は声を出して笑っている。


2体はすっかり黒くなっている。


【調達するゴブリン】通常攻撃力0

手練てだれのバフォメット】通常攻撃力0


魔鍛工まかこう ボイロヴン】魔法攻撃力3300(1500+500+1300)


「さぁ、行け!」


【ボイロヴン】が命令すると【バフォメット】がゆらゆらと歩き出した。

その姿にコーナーは思わず悲鳴を上げる。


手練てだれのバフォメット】通常攻撃力0

     vs

無双武闘むそうぶとう-アラカルト・ヒール】打撃攻撃力600


【アラカルト・ヒール】は笑いながら【バフォメット】に掴みかかるも【バフォメット】は表情ひとつ変えない。

【バフォメット】の体が砂のように崩れると【アラカルト・ヒール】の体内に入り込んだ。


戦士はコーナーに向かって歩き出した。


「俺の効果は、自分の場のモンスターの攻撃力を0にし、俺自身にその攻撃力を吸収する効果…」


コーナーは恐怖し、話が入ってこない。


「この効果で攻撃力が3000以上になっている場合、攻撃力0のモンスターが攻撃する戦闘でさらに効果を発動できる…」


その間にも操られた戦士は、主人へと歩みを進める。


「攻撃モンスターを破壊し、迎撃モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える!」


魔鍛工まかこう ボイロヴン】

モンスターカード/魔法部類/固有ターン5/加工系

魔法攻撃力1500

魔法効果:

・自分ターンに発動可能。(複数回発動可能)

自分の場の素材系モンスターまたは射手系モンスター1体を選ぶ。

そのモンスターの攻撃力分、このモンスターの攻撃力は上がり、そのモンスターの攻撃力は0になる。この効果で攻撃力が上がっている場合、このモンスターは攻撃できない。

・このモンスターの攻撃力が3000以上の場合に、自分の場の攻撃力0のモンスターが攻撃する場合に発動可能。そのモンスターを破壊して、迎撃モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える。

(灼熱の炎でモンスターを痛ましい姿にする悪魔。

仲間を見境なく犠牲にする姿は、「まさに悪魔」とも「鬼だ」とも評される)


「お前の大好きなモンスターに最後の一撃を任せてやるよ」


【アラカルト・ウォリアー】はコーナーを掴むと何度もフロアに叩きつけた。


「うわぁ!」


コーナーの累積ダメージ:3950(2000+3900÷2)


それを見てニヤリとするボイロヴン。


類清の勝利。

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