第40話 キャンプ前日 ③

若干、気まずそうにこちらを見てくるお姉さん(仮)。


「では、自己紹介をしていただけますか?」


一応丁寧な口調に戻し、彼女に話しかけたところ、後ろから声を掛けられた。


「戻ってこないと思ったらこんなところにいたのか、冬華とうか。何してるんだ?」


「先輩、こちらの方は?」


「あ、あぁ。萌たちは会ったことないよな。彼女は相馬冬華そうまとうかさん。俺の婚約者だ。」


「婚約者!?高校生で?」「マジか」「いいなぁ…」

俺たちは三者三様の様相を呈していたが、萌香さん…?


「所謂、許嫁とかではないのだけどな、たまたま親同士が知り合いだったのもあって今は婚約者となっているんだ。彼女が嫌がるようならすぐに解消するつもりだったのだがな。」


「それは、わかりましたがそこで泣いていた子との関係は?わが校の生徒にちょっかいを出されて黙っていられないのですが?」

俺は、先輩とその彼女(婚約者?)に聞いた。


「あまり暑くなるなよ萌。少し落ち着け。」と先輩から窘められる。


すると冬華さんが、苦笑いしながら話してくれた。

「梨花は義理の妹だ。ちなみに私と梨花の親は再婚同士で、お互いの連れ子なんだ。中学生までは模範的ないい子だったのに、近くにこんな奴がいたせいで高校に入ってすぐこんな格好をするようになって…。」

怜雄が目を丸くして驚いている。ちなみに怜雄の茶髪は地毛だそうだ。


「お姉さんにだけは言われたくないって言ってるでしょ!」

お、後輩が復活した。


「まあ、梨花の云う通りだな。でも、冬華も心配症だからな。」

先輩が相槌を打っている。


ま、事情はあるみたいだけど、これ以上介入するのは面倒だな。

明日のキャンプに障っても嫌だしな…。


「ただの姉妹ケンカみたいなんで俺たちは退散します。先輩方もバイト頑張ってください。では、また明日。行こう、萌香。」


「あぁ、ありがとうな萌。ほら、冬華もさぼってないで行くぞ。」

先輩は冬華さんを引っ張っていこうとする。


「え?ちょっと、健吾。まだ話が済んでないよ。ちょっと君!梨花に手を出したら承知しないよ。」

梨花さんのこと大好きなんだな。この姉…。要するにシスコンか。


「確かに、聡汰だけでなく怜雄も要注意か…。怜雄、梨花に下手なことはするなよ?」


先輩に睨まれ、怜雄は縮こまっているかと思ったが、以外にも…。


「先輩、梨花の事は俺の方が大切に想ってますよ。ずっと片想いですけどね。」


まっすぐに先輩の眼を見て言い返していた。


「下手なことをしなきゃ、何も言わないよ。ま、頑張んな。」


「はい。ありがとうございます。」


怜雄って、こういう時は、真面目なんだよな。普段は馬鹿なことしてるのに。


「それじゃ怜雄、俺たちも買い物が残っているし、行くわ。お前もバイトの時間忘れんなよ?」


「ちょっと、待ってよ萌。買い物一緒に行こうぜ。それから俺は今日はシフトには入ってないはずだけど…?」


「買い物は二人で行けばいいだろ?それからシフトではなく明日の仕込みだよ…。」

「あっ、忘れてた…。」


「勘弁してくれ…。一人でやるのは大変だからあそこを借りたんだ。」


「萌君、少しいいですか?梨花ちゃんがお礼を言いたいそうです。」


「ん?俺は何もしていないけど?」


「いえ、先輩は姉との間に入って私の味方をしてくれました。本当にありがとうございました。とてもカッコよかったです。それに比べて怜雄君は…。優しいのは良いんだけど、もう少し強くなってほしいよ。でも、さっき兄さんに言い返してくれたのはうれしかったな。花丸あげちゃうよ。」


「君って、見た目と話し方のギャップが凄いね。ほとんどギャルっぽさがない…。」


「これは、ですね…。先ほど姉さんが言っていた通りなんです。怜雄君と釣り合うように派手な見た目にしてみたんです。以前の私では地味すぎて周りの女子から反感を買うことも度々ありましたし。」


「そんなことがあったの!?まさか…そのせいで、フラれ続けていたのか?!」


「まあ、それだけではないんですけどね。丁度、母が再婚したころでもありましたし。彼氏彼女なんてやっている余裕もなかったんですよ。今では大和撫子みたいになっている姉も少し前までは、レディースの隊長っていうのをやっていましたから。」


いわれてみればそんな雰囲気があるような。

もしかしたらそっち方面で昔、会ったこともあったかもしれないな。


「だから、余計に心配していて。私に変な虫が付いたんじゃないかって…。私は、彼の髪が地毛だということも知っているし、おしゃれが好きなのも知っているから、見た目だけで判断して、彼の事をこんな奴とか、チャラ男の一言で片づけられるのが凄く嫌だったんです。」


なんだ、すごくいい子じゃないか。怜雄にはもったいないかもな。

「怜雄、これほどお前の事を考えてくれているんだから、もう少ししっかりしろよ。梨花ちゃんも怜雄の事よろしくね。」


「怜雄君、今度は梨花ちゃんの事、守ってあげてくださいね。」

萌香も梨花ちゃんのこと気に入ったみたいだな。


とりあえず、梨花ちゃんの希望あり4人で買い物を続けることになった。









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