第39話 キャンプ前日 ②
フードコートで萌香とうどんを食べていると…。
………っガチャン!
瀬戸物を落として割れたような大きな音がフードコートの奥から聞こえた。
なんだか嫌な予感がした俺は音がした方を見た。
少し遠いため目を凝らすと、怜雄と見たことのない女性二人がもめているのが見えた。
…見えてしまった…。
何であいつがいるんだよ、おろおろしてるし…。
まさか痴情のもつれか?
いや、まさかな。だって、怜雄だぞ?!
巻き込まれる前に、退席しようと萌香に声を掛けた。
が、遅かった…。
萌香も怜雄の存在に気が付いており、向こうも俺たちに気が付いてしまったようだ。
俺は怜雄に静かに手を振り、萌香とともに静かにフェードアウトをしたつもりであったが…。
マジか。あいつ、泣きそうな顔をしながらここまで聞こえる声で俺の名前を呼んでやがる…。恥ずかしいからやめてほしい。
「萌君。心配ではないですか?様子だけでも見に行きましょう。」
優しいなぁこの子は・・・。
「でも、二股とか痴情のもつれ的な事だった場合には怜雄君を成敗しちゃいましょう。そんな男性は女の敵です。」
うん。厳しい一面も持ってらっしゃる。
「ま、怜雄に限ってないとは思うがね。なんせ怜雄だし。」
「そうですね、怜雄君ですものね?」
二人の時間を邪魔された分失礼なことを言いながら彼のところに向かった。
* * *
俺たちは怜雄の傍まで行き、事情を聴いてみた。
「これはどういう状況ですか?彼女泣いてるけど大丈夫ですか?」
と、萌香が怜雄に問う。
「ごめんね、デート中の萌たちに迷惑かけて…。それがね…」
怜雄の話だと、明日からのキャンプに来る予定の後輩女子と、二人で初めての長距離ツーリングの為、服とかも買い足していたと。
その後も輩女子とは楽しく過ごせていたのだが、昼食を摂るためフードコートに来て、後輩がうどんを買ってきてから様子がおかしいことに気が付いたという。
怜雄は別のものを買いに行っていたのでそこで何があったかまでは知らないという。(先輩にも聞いてみるか?)
食事を終え、後輩が早く違うところに行こうと言い出した時、もう一人の女性が現れ言い合いに発展したということだった。
一応、怜雄にもう一人の女性に面識あるか尋ねるが、知らないという。
二股とかではないようだ。萌香がほっとしていた。
成敗って何をする気だったんだろう…?
……少し気になる。
それにしても、あのギャルっぽい子が後輩であり、怜雄の想い人の橘
泣いている橘さんをほっておけなかったのか萌香が隣に行き背中をさすっている。
萌香のおねーさんムーブが凄いと思った。
とすると、気まずそうにしているもう一人の人は?
というか、うどん屋の制服着てね?
商品の取り違えとかではないよな?
「さっき、梨花が姉さんと呼んでいたから、姉なんだと思うが…。」
「が?どうした?」
「いや、以前に梨花からは一人っ子だと聞いていたからさ…」
「ふーん。なら従姉とかか?」
「それは知らんけど、さっきのケンカの方はどうも俺が原因のような気もするんだよな。」
「なんで?自意識過剰とかではなく?」
「ひどいな。いや、こんなのと付き合ってるからこんなカッコするようになったみたいな…?半端なことして親を泣かすなとか?そんな感じで俺の事も全否定してたからあのお姉さん…。」
* * *
とりあえず、橘さんの復活を待つ前に事情聴取をしてしまいますかね。
俺は、お姉さん(仮)に話しかける。
「あの、お取込み中申し訳ないが、彼女はうちの学生のようだ。
俺は、みなみ高校生徒会副会長の齋藤萌という。ちなみに知らないと思うが、そこいる女性と彼もこう見えて生徒会役員だ。怪しいものではない。なにがあったか教えてはくれないだろうか?」
「そうだったのか、すまない。君はともかくこんな奴が生徒会役員とはね?みなみ高ってことは健吾と同じか。あまりこういうことは言いたくないが、品性が感じられないな。」
「悪いな、こいつも見た目はこんなんだが、仕事はできるぞ。うちは実力主義なところがあるからな、品性とか言われると耳が痛いが、こんなところで口喧嘩をしている輩に品性を説かれるとは思わなかったよ、そんなわけで一応、貴女の素性も確認させてほしいのだが?」
俺はイラっとしたこともあり、嫌味も含んで改めて問いかけた。
しかし、健吾ね。先輩の彼女ってこともありうるのか?
ま、いっか。俺から喧嘩売ったわけじゃないし。
「萌君、落ち着いてください。そんな怖い顔をしててはこの子がまた泣いてしまいますよ。」
ありゃ、そんな怖い顔してたかね?
でもな萌香、こんな友達でも貶されりゃ怒りもするさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます