第38話 キャンプ前日 (一部改稿)
昨日の稽古のダメージを引きずりながら(…全身サロンパス人間…)、いつもの休日より少し早めに起床して萌香と出かける準備をしていた。
今日は、夕方からバイトもあるので早めに出かけることになっている。
ま、それ以上に萌香に会えることが楽しみで早くに目が覚めていたんだけど…。
着替えを終えて、下に降りるとキッチンには母さんがいる。
仏壇のお世話や来客への対応の為、ゴールデンウイークの間はこっちの家にいるみたいだ。
仕事は方は、法事のこともあり、1週間くらいの休みを取ったと言っていた。これまで有給どころか公休も消化しきれていなかったから丁度良かったと、いや、ブラックかよ!とさすがに突っ込みを入れた。休みの間もたまに仕事で呼ばれて行っていたりもするし。ヤバいだろ。
少しは年を考えて体をいたわったら?と言ったら「余計なお世話だ!」と言い返されてしまった。
以前に比べてお互いにずいぶん遠慮もなくなってきたと思う、親子だし当然なんだろうけどな…。
普通の関係という距離感がわからなくなっている俺には、すべてが新鮮に感じる訳だ。
こういう、平穏な日常が戻りつつあると思うと胸のあたりが熱くなった。
楓については受験勉強もあるのでこっちには来ていないようだ。
萌香や久美には相談して、志望高校もだいぶ絞ったみたいだけど、俺にはまだ秘密なんだとか。
何でじゃ…。
夏ごろから始まる学校見学には付き合って欲しいと頼まれているが優秀なあいつなことだ、俺とは違う進学校を選ぶのだろう。
さて、母さんが作ってくれた朝食を食べて萌香を迎えに向かおう。
爺ちゃんから借りたドゥカティの癖にもだいぶ馴染んできた。
母さんは高校生が乗るバイクじゃないと呆れていたが…。
ちなみ、萌香の件は告白当日に婆ちゃんから母さんに動画が送られ楓も含めて大いに盛り上がっていた。
ドゥカティの乾いたエンジン音を響かせながら、萌香の住むマンションへ向かう。
例によって、管理棟前に止めさせてもらい管理人さんとバイクが変わったいきさつなどを話をしながら待っていると、エントランスから猛ダッシュで出てきた萌香が俺の腹を目掛けてタックルしてくる。
「んぐぉ!お、おはよう萌香。」
俺の腹に顔をうずめている萌香が、恥ずかしそうに俺をみて、
「ゴメンナサイ。服を選んでいて遅くなってしまいました。」
なに?その可愛い理由…。が、しかし。
「まだ時間前だから心配ないよ萌香。俺が早く来ていただけだから。管理人さんと話してたから退屈もしなかったし。」
「そうですか?では、改めておはようございます。今日もよろしくお願いしますね。」
「おう!んじゃ出発しようか?…と、その前に…んと、今日の萌香も可愛いな。」
今日の萌香は、ロングのワンピースにスキニーデニムパンツの組み合わせであった。
バイクに乗りやすいよう、ワンピースはサイドにスリットが入っていた。白いスニーカーにもよくあっていた。
また、ヘルメットのことを意識してか、髪も一本に縛ってありベージュ色のキャップを手に持っていた。萌香曰くキャンプを意識した服装だそうだ。うん、最高です。
早速、バイクに乗ってもらい買い物に出発する。
今回の買い物では大きなものを買う予定もないので、爺ちゃんに借りた大型のタンクバッグで事足りる予定だ。一応、萌香にもリュックを持ってきてもらっているので、問題ないだろう。
※ ※ ※
都市部に向けバイクを走らせる。
先ずやってきたのが、萌香からのリクエストでワークメン+。
ここで萌香が見ているのは、焚き火用の難燃素材のプールオーバージャケットと巻きスカート。フィッティングルームで試着したものを俺に見せてくる。
「萌君?このプールオーバーにこの巻きスカートがいいと思うんですがどう思います?色もシンプルでかわいいと思うんですが…。」
「うん。すごくいいと思うよ、機能的だし。萌香が着るならどれも可愛くに見えちゃうからな…。」
「萌君。それは本気で言ってますか?」
「え?う、うん。ゴメン。」
「謝らなくてもいいですよ、萌君は!もう、とりあえずこれは買いますね。」
その後も、アンダーシャツやタイツ、ワーキンググローブなどを追加してここでの買い物は終了となった。
なお、俺はというと萌香とおそろいの焚き火用プールオーバーを購入した。
俺はお揃いとか抵抗がない人だった…。
その後、昼食をとるためにいつものショッピングモールへ移動した。
「今日は何食べようか?」
俺が萌香に尋ねると、
「そうですね、ラーメンもいいですけど。今日はお出汁が美味しいうどんが食べたいですね。」
「いいね!なら俺は釜揚げうどんにしよう!ショウガとネギがしっかり入っているやつが大好きなんだ!」
「萌君もノリノリですね。では、うどんを食べに行きましょう!」
俺たちはトッピングの話をしながらショッピングモール内にあるフードコートに向かった。
うどん屋で注文がおわり、流れ作業のように出てくるうどんと天麩羅を受け取り、会計をする。
「二人分。彼女の分はこっちに入れてください。」「え?萌君?」
萌香の分くらい俺が支払いたいと伝える。
「はい。では、〇〇〇〇円になります。」
「んじゃ、これで…。」「萌君、ご馳走様。あとでお礼するね。」
「〇〇〇円のお返しですね。あざーす。
……って、萌!気づけよ!」
「あれ?健吾先輩?(本気で分からなかった。)何してるんですか?今日、聡汰たちと買い物では?」
「残念ながら、緊急でバイトになった。今日シフトの人が急病でな。彼女をムサイ男どもの中に一人にできないからな。」
あっ、彼女?先輩の彼女ここでバイトしてたんだ?
「先輩も大変ですね?ここでのバイト長いんですか?見たことなかったけど。」
「いやぁ、割と最近始めたんだよ。受験勉強が本格化するまでの短期間だけどな。やっぱり少しはお金貯めときたいからな。」
「そうだったんすね。んじゃ、先輩、デート代頑張って稼いでくださいね?」
「健吾先輩頑張ってくださいね。では、また明日!」
「おう、明日はよろしくな!キャンプには俺の彼女も行くと思う…。まだ確定ではないが…。そん時はよろしくな。」
ヤケに歯切れが悪い。珍しいな。
「そうなんですか?んじゃ彼女さんにもよろしくお伝えください。」
「ああ、じゃあな。」
俺も先輩の彼女には会ったことないからな。
どんな人なんだろ?でもなんで急に明日行くことに?
というか他校の人じゃなかったか?
店の中には男の人しかいなかったしな?
「萌君、先輩の彼女さんってどんな人なんです?」
「いや、俺も知らないんだよ。しかも他校の人らしいし。それが何で明日来ることになってるんだろ?ものすごい嫉妬深いとか?」
案外いい線言っているかもしれないなぁ。
なんせ、生徒会役員ばかりとはいえ女性が来るし。
「あとは、キャンプに参加されるかたの身内とか…?ですかね。」
それな!
「ありえる。だって、生徒会もつながり凄いだろ…。親戚みたいな集まりだからな。」
「そう言われてみれば、そういう見方も出来るからすごいですね。そうすると礒部さんの想い人の方と先輩の彼女さんのお二人が初めましてということになりますね。」
「そうだな、少し心配ではあるけど、楽しみだね。」
「そうですね!」
二人で笑いながら、おいしいうどんを食べた。
………っガチャン!
大きな音がフードコートの奥から聞こえた。
ヤバい予感がした俺は音がした方を見て、目を凝らすと、怜雄と見たことのない女性二人がもめているのが見えた。
…見えてしまった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます