第6話 すくすく成長
ティネが成長していく様子を、私は近くで見守り続けた。
ハイハイが出来るようになり、少しずつ話せるようにもなった。段々と表情も豊かになって、ティネの感情が読み取れるようになった。
歩けるようになっても、部屋から出してもらえない日々が続いていた。勝手に私が、ティネを外へ連れて行くようにした。メイド達にはバレないように気をつけて。
父親がティネの部屋を訪れることは稀で、一度も触れ合うことはなかった。母親は一度も見ていない。やはり異常な家庭環境。そもそも、部屋に閉じ込めておくことが異常だけど。
私が居なかったら、どうなっていたのか。想像すると、ゾッとするような状況だ。
この屋敷からティネを連れて、外へ出ていくことを何度か考えてみたことがある。だけど、止めておいた。
今の環境は、ティネにとってあまり良くはない。けれど、ちゃんと食事は出してもらえる。着替えも用意してもらって、寝る場所もある。衣食住が十分に足りていた。
どうやら、この世界にはモンスターが存在しているらしい。どれぐらい強いのか、私は知らない。外の世界がどれほど危険なのか、分からない。だから、外に出るのは止めておいた。私の力だけで、ティネを守り切れるのか分からないから。
もう少しティネが成長してくれたら、外に出てみるのも良いかもしれない。だけど今は、ここでの生活を続けたほうが良さそうだと判断したので。
「お嬢様、お時間です」
「うん」
メイドの呼びかけに返事をして、部屋を移動するティネ。幼女になったティネは、しっかりとした教育を受けていた。貴族社会のマナーや、歴史について学んでいる。私も、彼女の近くで一緒に勉強していた。
「えーっと、昨日の続きから」
「はい」
「ッ! そ、それでは! ローヴリック王国と近隣国の関係について―――」
屋敷に若い女性の家庭教師が来て、ティネに教えていた。かなり優秀な人のようだが、彼女もティネに対して非常に怯えていた。
家庭教師の女性は、ティネのちょっとした動きにも過剰に反応する。常に警戒しているのが分かった。どうやら、封印について知っている人物のようだ。
ティネの封印については、多くの人達が知っているのか。それとも、関係者だけが知っているのか。まだ、分からない。
けれど、教育を受けさせてくれるのは良かった。ちゃんと学んで、しっかりとした淑女になれるよう応援する。ティネには、良い子に育ってほしい。それが、私の願いだった。
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