第18話 答え
2週間が過ぎようとしている木曜の夕方、明石からLIMEのメッセージが届いた。
【明日、仕事のあと空いてたら飯行かない?】
【その後でこの前の答えを聞かせてもらえたらと思います】
明石にしては普段よりなんとなくメッセージがぎこちない。
【空いてます】
【18:30までには終わると思います。】
香魚子が返信した。
【なんか食べたいものある?店予約するよ。】
(…何が出てきても緊張しちゃって食べれないかも…)
【予約ありがとうございます。なんでも大丈夫です】
【前に行ったお店もおいしかったです】
お決まりの鮎のスタンプをつけた。
【じゃあ、待ち合わせもしやすいから同じ店にしようか。19:00で予約しておきます】
翌日 19:00 フラム
「飲み物何にする?」
「えっと、じゃあモヒートにします。」
「モヒートとハイボール、それと…」
注文した飲み物や食べ物が届き、二人は乾杯して食事を始めた。
「あれから体調は大丈夫?」
「はい。ご心配おかけしちゃって…あれからは睡眠もちゃんととれてます。」
「なら良かった。」
明石が優しく笑った。正面に明石の顔があるせいか、いつもよりもドキドキする。
「明石さん、えっと…この前のお話なんですけど…」
「待った。LIMEで言ったでしょ、食事の後で聞かせてって。飯は普通に食おう。最近あんまり話せてなかったから、いろいろ話したいし聞きたい。」
「はい。」
香魚子は明石に対して久しぶりに明るい笑顔を見せた。
明石との会話は対面でも電話でもドキドキしてしまって落ち着かないが、この2週間で香魚子の方も明石に話したいことがたくさん溜まっていた。
明石の出張の話、気になっている映画の話、会社で流れているラジオから聴こえた音楽の話、明石と柏木の話、休みの日に出かけた場所の話など、いろいろなことを話した。今までずっと自分の話しをするのが苦手な方だと思っていた香魚子だが、明石といると話したいことが
(楽しいな…ずっとこんなふうに話してたいな。)
緊張して食べられないかもしれないと心配していた香魚子だったが、気づけば明石に勧められてデザートまで食べていた。
「美味しい?」
にこにこしながらジェラートを食べる香魚子に、明石も微笑んで聞いた。
「はい。トウモロコシのジェラートってびっくりしたけど、すごく美味しいです!」
香魚子はにこにこしたまま答えた。
「よかったら、明石さんもひと口食べますか?」
「ん?」
言った瞬間、香魚子は硬直した。
(やばい…)
「すみません。女友達のノリで言っちゃいました…!」
「………。」
明石は苦笑いした。
会計を終えて—というよりも気づいたら明石が支払いを終えていたのだが—二人は店を出た。
「あの!今日は自分の分払います!それとこの前のタクシー代も…」
「いいから。誘ったのも俺だし、タクシー乗せたのも俺だから。」
「でも…」
「代わりにちょっと酔い
「はい…」
二人が“散歩”に訪れたのは、大きな河沿いの遊歩道だった。
夏も終わろうとしている夜、どこからか虫の声が聞こえ始めていた。
「今、仕事忙しい?」
歩きながら明石が聞いた。
「
「そっか。」
「明石さん、あの…」
香魚子は立ち止まった。
明石も立ち止まって、香魚子の方を向いた。
「この間の…えっと…えっと…」
「ゆっくりでいいよ。落ち着いて。」
———スーハーッ…
香魚子は小さく深呼吸をした。
「えっと…まず…決めたんですけど…会社は辞めることにしました。あの会社にこれ以上いても自分にプラスにならないと思うので。」
「うん。」
「それで…明石さんの会社のことなんですけど…」
「………」
明石は黙って聞いている。
「…明石さんの会社には入れないです…。」
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