第7話「新海なのん」

 不良共をボコボコにできたのは楽しかったからいい。

 が、流石に魔力の枯渇がヤバくなってきた。


 ステータスを見ると残り魔力量は5。頭がぼおっとする。油断するとその場に倒れ込んでしまいそうだ。


 家に帰ったら速攻寝た方がいいな。うん、そうしよう。


「それで、お前は大丈夫か?」


 俺は不良達に絡まれたいた少女へと目をやる。


 随分と小柄な少女。

 身長は140cmより下ってくらい。体躯の割に胸はかなり大きめだ。ま、まあ? 別に興味はないけれどね?


「は、はい! だ、大丈夫です……」


「…………」


 と、いいつつ若干、いやかなり震え声。

 声も上擦っているというかイントネーションがちょっとおかしいし、うん、大丈夫じゃないな、この人。


「とりあえず、ハンカチ」


「……?」


「いやほら、涙とか」


「!」


 ビックリマークが見えるほど驚いたあと、かあっと顔を赤らめ、慌ててハンカチを受け取る。


「お見苦しい姿を……!」


「別に気にしてないよ」


 一々反応が大袈裟だ。なんかちょっと面白い。


「は、ハンカチをありがとうございます……」


「いえいえ」


 涙を拭いたあと、ハンカチを畳んで返してくる少女。そのハンカチを受け取る際、彼女の手に軽く触れ、ステータスを閲覧する。


――――――――――――――――――――――――

新海にいみなのん 18歳

HP 70/70

状態異常『恐怖』


【異能力】



【スキル】

『英語』『植物学』『地理学』『気配遮断』『気配感知』『隠密』『料理の達人』

――――――――――――――――――――――――


 かなりハイスペックなスキル欄……っていうか18歳って。この人俺より歳上じゃねえか。


 だが、それ以上に目を引かれるのは、その上の、状態異常?


 今日色んな人間を見てきたが、こんな項目があるステータスは始めてだ。

 さらに詳細を見てみよう。


――――――――――――――――――――――――

『状態異常』

「精神的、あるいは外的な影響で性質ステータスにマイナスの効果を与えるバッドステータス」

――――――――――――――――――――――――


 要するに、RPGなんかの状態異常と同じか。


 こういう感じに表示されてるってことは、『改変リライト』を使えば彼女の……なのんさんの『恐怖』を取り除けるってことなんだよな。


「………………」


 魔力量が少ないけど、やってみるか?


 なのんさん今もビクビクしててなんか見てていい気分じゃないし。まあ、魔力枯渇で倒れる危険性もあるけど。


「手、出してください」


「え……こ、こうですか?」


 俺は差し出された手を軽く握る。


「ぁ……」


 そんで即座にステータス閲覧、『改変リライト』を発動。対象はもちろん状態異常の『恐怖』。俺はステータス欄からそれを取り除くように念じる。


 魔力量が心配だったが、気絶することなく発動することができた。


「にゃっ、なにを……っ!?」


「ああすみません。失礼でしたね」


 俺は彼女から手を離す。


 『恐怖』を取り除くためとはいえ、見ず知らずの女性の手を握るのは流石にキモかったな。


 なのんさんの方を見ると、顔を赤らめ、動揺しながら握られた手を見つめている。


 嫌がってる様子はなさそうだけど……握ったことに対して思うことがあるって顔だ。


「それで、恐怖感の方は和らぎました?」


「え? あれ、言われてみれば……」


「なら良かった」


 こんな整った容姿の人が、怯えた表情でいるのは気分が悪いからな。


「それじゃ。俺はこれで」


 そう言って、俺はスタスタ立ち去る。


「待って!」


「ん?」


「一方的に助けて貰って、お礼もなしは、その……。せめて、お礼だけでもさせてほしいんです!」


「お礼、ですか」


 うーん……。気持ちは嬉しいけど、特に求めている物はない。


 でも彼女の様子を見る感じ、「ない」と言っても聞かなそうだし……。


 ――ぐきゅうるるる。


「……………………」


「もしかして、お腹空いてます?」


「まあ……はい」


 やべえ。すげえ恥ずかしい。

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