第3話「接触」

「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」


 妹の奏恋に揺さぶられて目を覚ます。


 なんだよ、もう朝かよ……っと思ったが、時計を見ても21時。


 ああ……、そういえば俺、気絶したんだっけ?


 どうやら『改変リライト』の能力を使い過ぎると倒れてしまうようだな。


「って、ん……?」


 奏恋に触れられた瞬間、俺の視界にこんな文章が浮かび出す。


――――――――――――――――――――――――

隠橋奏恋 16歳

HP 110/110


【スキル】

『ぐうたら』『盆栽』『コミュ強』『美肌』『テニス』『水泳』

――――――――――――――――――――――――


 このステータス。これは、奏恋の?


 そういえば『改変リライト』の説明には俺自身のステータスしか見えないとは書いてなかった。


 急に奏恋のステータスが見えだしたのは、『接触』がステータス閲覧の条件なのだろうか。


「呼んでも全く返事しないから心配したんだよ! それで部屋に入ったらお兄ちゃん気絶してるわ、なんか痩せてるわで……」


「奏恋、一回俺を揺さぶってる手離してみてくれ」


「え? こ、こう?」


 予想通り。奏恋が俺から手を離した瞬間、俺の視界から奏恋のステータスが消えた。


 やはりステータス閲覧の条件は『接触』か。


 『改変リライト』の説明に物質と書いてあったということは、別に人じゃなくてもステータス閲覧ができるってことか?


 試しにスマホを持って、ステータス表示を念じてみる。


――――――――――――――――――――――――

『隠橋空真のスマホ』

モバイル向けオペレーションシステムを備えた携帯電話

▼さらに詳細を見る

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 やっぱり見えた。


 でもこれはステータスというより物質の情報説明って感じだ。

 

そういえば『改変リライト』の説明には性質ステータス情報データの二つを見れるって書いてあったな。


 ってことは今見てるやつはステータスじゃなくてデータってことか。


「お、お兄ちゃんどうしたの……急にスマホを持ち出して……」


「別にスマホを持つくらい普通だろ」


「そ、そうだけど……。でも、電源もつけずにスマホを見てるっておかしいでしょ!」


 んん、確かに。


 気になったからといって妹の目の前でデータ閲覧するのは不自然か。これから気を付けよう。


「ま、いいだろ。それより飯食べようぜ飯」


 立ち上がり、飯を食べようと促す。


「いいけど……。本当にお兄ちゃん大丈夫? 変な薬とかやってない?」


「やってねーよ」


「じゃあなんで痩せてるの!?」


「これは……ダイエットだ」


「一瞬で痩せるはずがあるかあ!」


 妹の言及もといツッコミは飯を食べた後も続いた。


 これは俺が急に痩せだした異変のせいもあるんだろうが、単純に気絶したことが心配なんだろうな。


 この妹16歳にもなってブラコンで心配症だし。


 妹のためにも、改変リライトの使い過ぎは控えておくか。


「というか……」


 気絶したあとも感じていた倦怠感、身体の疲れ。


 それがご飯を食べたあとやわらいだ気がする。


「もしかして、飯を食べるとMPが回復するのか?」


 だとしたら、飯はしっかり食べた方がいいな。

 今までは朝ご飯食べてなかったけど、明日からはコンビニで弁当でも買うことにするか。


 あ、でも食いすぎないようにしないとな。またデブれば困るし。


 まあ改変リライトで治せるっちゃ治せるんだけどな。


「っと改変リライトといえば……」


 筋肉質の身体になるために『筋肉ムキムキ』のスキルを追加したけど、そのときは考えていた通りの身体にできなかった。


 こういう失敗を無くすためにも、なるべく追加するスキルは他の人が持ってるスキル……どういう結果になるかわかるスキルの方がいいな。


「明日髪を整えるついでに、色んな人のステータスを見てみるか」

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