エピローグ

─午前3時─

 真っ暗なリビングをテレビの光が不気味に照らす。

『次のニュースです。

 今日未明、朝陽あさひ高校に通う水原 連華さん(17歳)が学校の施設内で遺体となって発見されました。

 死因は、コンセントで首を絞められたことによる窒息死とのこと。

 第1発見者の証言によりますと、水原 連華さんを発見した際に金木犀の香りがしたとのことで、警察は今世間を騒がせている"連続殺人事件”の可能性を視野に入れ捜査をしているとのことです。

 続いてのニュースは………………』


(え……!? どうゆう……こと…………)

 桂香はテレビで流れた内容を理解することができなかった。というよりも、受け入れることができなかった。

 当然だ。いつも隣りにいてくれて、一緒に笑ったり、泣いたり、馬鹿げた話をしたりしていた親友が死んだなんて簡単に受け入れられるものじゃない。

(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。これは悪い夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ。絶対に悪い夢だ)

 桂香は涙で顔をくしゃくしゃにしながら叫んだ。心の中で何度も何度も何度も何度も、誰にも届くことのない悲痛の叫びを──



 突然──

「あは、あはは、はははははははははははははは」

 静かなリビングに、歪んだ笑い声が響く。

「こんなに泣いちゃってかわいいね、

 でもね、私が悪いんだよ!私が『いつもと変わらない日常がつまらない』なんて言うから、だから非日常をプレゼントしてあげたのに。傷ついちゃうなー 本当に傷ついちゃうなー あ た し・ ・ ・

 そう言いながら、桂香しょうじょは涙でくしゃくしゃにした顔の口角を歪ませた。

「でも、まだ足りない。もっともっとプレゼントしてあげるからね。ふふふ、あはははははははははははは」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金木犀の甘い香り 壱花 零 @Itihana-Rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る