第14話 願いごと
「チズの一番の願いは“
自分で言う前に昴に言われてしまった。
「え、な、なんで!?なんでそれ知って…」
ずっと内緒にしていたつもりの願いごとだった。もちろん口に出さないようにも気をつけていた。
「チズから聞いたことはないけど、絵馬とか七夕の短冊とかに書いてただろ。」
「あ…!」
“やってしまった”という表情を見せる千珠琉に昴は思わず笑ってしまう。
「本当にチズは表情ころころ変わっておもしろいな。」
「褒めてない…」
「褒めてるって。前にも言っただろ?かわいいって。」
また急に“かわいい”と言われて、千珠琉は思わず赤面してしまった。
今日の昴はなんだかいつもと違う気がする、その気まずさから千珠琉は必死に次の話題を探した。
「あ!」
何かを思い出したように千珠琉が声を発した。
「何?」
「あった、願いごと…知りたいこと!」
「何」
昴は怪訝そうな
「昴、最近お金貯めてるって言ってたけど、何のため?引っ越しじゃないよね?」
「このタイミングでそれか…」
と言って、昴はフゥ…と一呼吸吐いた。
「金が欲しかった理由はいくつかあるんだけど…」
「うん」
千珠琉は真剣に聞いている。
「バイク買いたいんだ。」
「え?昴もう持ってるじゃん…。」
自分が知らないうちに昴が手に入れていたバイクを思い浮かべた。
「あれは先輩が乗らなくなったやつを格安で譲ってもらったやつ。もうちょい良いやつ買いたいんだ。」
「ふーん…」
つまらなそうに千珠琉は言った。
(そんなにバイクが好きだったんだ…。)
「バイクがあったら、いつでも小清瑞に帰ってこれるから。」
昴が言った。
「え…あ、そっか…」
「チズさ、俺は小清瑞から引っ越すの寂しがってないと思ってるだろ。生まれてから17年間過ごしたんだから寂しいよ。」
「………。」
よく考えたら当たり前だし、むしろ地元を離れる昴の方が寂しい筈だ、と今はじめて気づいた。
「…私って自分のことばっかりだね…。」
千珠琉はしゅんとした声で肩を落とした。
「べつにそんなことないと思うけど、それならそれで良いよ。俺がチズの分まで考えるから。だから…」
「だから?」
「俺は今日流れ星じゃなくて、チズにお願いしに来たんだ。」
急に思いがけないことを言われて、千珠琉はよくわからないという
「流れ星じゃなくて、私に?」
「そう。チズしか叶えらんない願い。」
「え、そんなのあるかなぁ?」
きょとんとする千珠琉に昴はフッと小さく笑ってポケットから何かを取り出した。
「俺がバイトしてたもう一つの理由。」
そう言って昴が千珠琉の手に乗せたのは小さな箱だった。
「なに?これ。」
そう聞きながらも、千珠琉にはその箱の形から入っているのが小さなアクセサリーだろうということまでは見当がついていた。しかし、だとしたら“何故そんなものをわたされるのか”の理由には全く思い当たらない。
「開けていい?」
千珠琉の質問に、昴はこくっと頷いた。
パカッと蓋を開けると、シルバーに小さな透明の石がついた指輪が目に飛び込んできた。
「なにこれ」
「指輪。」
「指輪はわかるよ…じゃなくて、なんで指輪…昴が、え?私に…?」
「俺の願いごと。」
「え?」
「チズ、結婚して。」
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