第19話




『荒れ果てし辺境の遺跡』の第四階層を歩いて進んでいき、もう少しでダンジョンの折り返し地点である第五階層に到着する。


 道中で中継ポイントである石碑を発見したが、星崎たちは見向きもしなかった。まだ地上に帰還するつもりはないようだ。ひょっとしたら、最下層にあるボス部屋まで踏破するつもりなのかもしれない。


 第五階層に踏み入る前に、辺りに魔物がいないことを確認すると、一度休憩を挟むことにした。まだHPには余裕があるが、星崎の指示で朝美から【回復】をかけてもらい、俺のHPはマックスになった。

 

 休憩になると、星崎は俺から離れたところに腰を下ろす。話しかけるなオーラがハンパない。距離の置かれかたがエグかった。


 これじゃあ好感度があげられないよぉ。さっきもいいところを見せられなかったし。

 

 端っこのほうに座り込むと、指先で地面に渦巻き模様を描きながらチェ~と落ち込む。


「あなたは、がんばっているほうだと思いますよ」


 淡々としているが、こちらを気づかうような声がする。


 顔をあげてみると、そこに朝美が立っていた。


「ア、アサミン……!」


「馴れ馴れしいので、その呼び方はやめてください」


 本当に冗談抜きで、とってもイヤそうな顔をされてしまったよ。


 えぇ~、そお? 似合ってると思うのにな。けど女子高生からすれば、結構な年上の成人男性から愛称で呼ばれるのって、メンタル的にしんどいのかも。


 それでもアサミンって呼び続けるけどね。だって仲良くしたいもん。


「新米冒険者でマナカさまの隣に並び立てる人は、わたしを除いてほぼいません。正直、あなたがここまでついてこられたことには驚いていますよ。きっと、マナカさまだってそうです」


 えぇっと、もしかしてなぐさめてくれているの? 俺と星崎の間に立って、どうにかバランスを取ろうとしてくれている?


 アサミンってば、やさしい。


「うん、俺がんばるよ。もっと星崎と仲良くなれるようにするね」


「いえ、あんまりグイグイ行っちゃうのは、逆効果だと思いますけど」


 結構な年下の女子高生からなぐさめてもらうと、握り拳をつくって立ちあがる。


 そんな俺を見て、アサミンは「なんなのこの人?」っていう顔をしていた。完全に不審者を見る目だね。


 よぉし、ここからがんばっていくぞ。





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