第8話 打合わせ
「それで……結局どういうことなのかな、
「
俺の彼女であり、俺の作品のヒロインの担当声優でもある
その彼女は今、俺の部屋で俺のベッドに腰かけ、怒りをあらわにしていた。
腕を組んで、俺を睨みつけている。
「ほんとに、どういうことなんです? 先生……!」
「うう……カエデさん……」
俺の担当編集であり、叔母の
彼女は今、俺の部屋で俺の椅子に腰かけ、怒りと困惑をあらわにしていた。
脚を組んで、俺を睨みつけている。
「わ、わかったから……! 二人とも、落ち着いてくれ……! 俺にもなにがなんだか……」
俺はとりあえず、二人をなだめる。
正直俺にもどういうことかよくわかっていない。
ここは落ち着いて、考えることが必要だろう。
「それで……この人は誰なの……? 本当に、
美咲は俺にそう問い詰める。
ああ、コイツ……俺が浮気してるとでも……?
「いやいや、この人は俺の叔母で、担当編集のカエデさんだよ。今日はちょうど、仕事の用事で寄ったんだ。ね? カエデさん……?」
「え、ええ……そうよ」
「そ、そうだったの!? まさか担当さんだったなんて……! あの、私も『よじはん』大好きで、毎週見ています!」
美咲はそう言って、カエデさんに挨拶した。
それから、カエデさんが俺に振り返り。
「それで……この子、
「うう……それは……」
単刀直入、一番聞かれたくないことを聞かれた。
作家が、自分の作品の声優と付き合っているなんてことが、世間に知れたらどうなるか……。
俺は、炎上なんて絶対にごめんだ。
いや、まあ……俺が美咲と付き合ったのは、声優の件を知る前からだし、問題はないのか?
いやいや、世間はそんなことは関係なしに、許しちゃくれないぞ!?
俺が答えに詰まっていると、美咲が先に口を開いた。
「私、
「はぁ……そういうことね……それにしても、本当に付き合ってるなんてね……」
「それで、どういうことなんですか!? まさか、
美咲は、編集であるカエデさんがうちにきたことからもそう思ったのだろう。
まあ、電話口の俺の態度がおかしかったこともある。
しかしこうやってわがことのように俺の作品を心配してくれるところが、本当にいい子だな。
いかに俺の作品を愛してくれているかが伝わってくる。
「まあ、そうなのよね……。
「そ、そうなんですか……!?」
「ええ、それで代わりの声優さんを立てることになったんだけど……その声優というのが、あなたなのよ」
「はいはい、なるほど……って、ええええええ!?!?!?!?」
美咲は柄にもなく、声を荒げて、大きなリアクションをとった。
まあ、そりゃあびっくりもするよな……なにせタイミングができすぎている。
それに、俺も聞いたときはびっくりした。
「私……聞いてないんですけど……」
「まあ、不祥事っていうのもあるし、その辺はね。マネージャーさんには話は通ってるはずだけれど……」
「そうだったんですか……」
「ということでまあ、このことは内密にね」
「は、はい! もちろんです!」
そう言った美咲の表情は、どこか嬉しそうだった。
まあ、俺の作品のファンだし、当然か。
俺の作品のヒロインをやるために、業界に入ったとかって言ってたっけ。
じゃあつまり、彼女にしてみればかねてからの夢がかなうというわけだ。
「そういうことだ。よろしくたのむよ
「はい! 先生! 私、精一杯がんばります!」
ということで、一件落着――と思いきや。
「まったく……とんでもないことになっちゃったわね……」
カエデさんが若干キレ気味にため息を吐いた。
「はぁ……すみません……」
まあタイミングがタイミングだしな……。
まさか俺もこんなタイミングで、美咲と付き合うことになるなんて思ってもみなかった。
「それで、あなたたち二人は本気のお付き合いをしているのね?」
「ああ、もちろんだ」「もちろんです!」
「そう……なら仕方ないわね……。私も、関係者として全力で二人を守るわ。もちろん、二人とも協力はしてもらうわよ」
「「はい……!」」
編集者であるカエデさんが味方してくれるのは頼もしい限りだ。
まあ、俺が『よじはん』の作者であることは、学校で知る人物は美咲だけだし、そうそうバレることはないとは思うが……。
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