第7話 鉢合わせ
※3人称視点
先ほどカエデは、電話で
夕上にそれを無視されてしまったのである。
急ぎの連絡でもあったので、カエデは夕上宅へ直接出向くことにした。
しばらく直接会ってはいなかったので、夕上に会いたいという純粋な目的も兼ねていた。
「はぁ……
なにを隠そう、この担当編集のカエデは、ひそかに夕上に思いを寄せていたのだ。
だが相手は高校生、しかも担当という間柄である。
こうして何かと理由をつけて家に会いに行くのが、精一杯のアプローチだった。
「そうだ……! ついでに私が料理でもして帰ろう!」
カエデは、そんな浮かれた気持ちで、夕上宅へと向かった。
しかし、その家の前で、意外な人物と鉢合わせしてしまう。
先ほどまさに夕上との電話で話題に上がった、あの人物。
「な……なんであなたがここに……!?」
カエデは、その姿を確認して、絶句した。
いったい、何が起こっているのだろうと。
一方の美咲は、カエデのことを夕上の家族だと思ったのか。
「あ、夕上くんのお姉さんですか……?」
カエデは思わず、その言葉にうなずいてしまった。
「そ、そうです……」
まあ、関係としては、姉のようなもので間違いはない……というのが夕上とカエデの関係性だった。
夕上
つまりは
たまたま編集部に叔母がいたので、その縁もあって担当になったのだった。
そんなカエデに、美咲は残酷な真実を告げる。
「あ、私……夕上
「…………は……? …………はぁ……!?」
数秒遅れて、カエデはリアクションをとった。
もう、わけがわからないという感じである。
さっき話題に出た、あのトップアイドル声優が、なぜか自分の担当作家の家の前に、既に現れていて――しかも、自らを彼女だというのだ。
カエデからすれば、理解の範疇を超えた異常事態が起きていた。
「あの……ど、どうしたんですか……?」
「い、いえ……なんでもないのよ……アハハ……」
失恋、である。
カエデは
しかし、それもここで終わりだ。
相手が日本のトップアイドルで、カエデのほうは叔母であり、しかも年も27で、離れている。
これは勝目がない、ともともと望み薄であった恋ではあるが……簡単にあきらめがつく。
そしてカエデは誤魔化すように。
「その……立ち話もなんだから、どうぞ……?」
「あ、はい。お邪魔します」
と、美咲を夕上家の中へ案内した。
カエデは担当編集という間柄でありながら、叔母でもあり、夕上家とは家族同然の付き合いだ。
勝手知ったる感じで、美咲を家に招き入れる。
その様子を、二回の執筆部屋の窓から見ていた
「ど、どういうことだよ……コレ……」
今まさに自分の編集と、彼女が家に入って来た状況に、混乱と恐怖を覚えていたのである。
「はぁ……面倒なことになった……」
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