第3話 好きの理由
「ちょっと
「あ
放課後俺は、真っ先に
そして。
向かうは人気のないところだ。
クラスメイトたちからの注目の視線が痛い。
特に、
あいつに絡まれるとまた面倒だ。
俺は
そして誰もいない図書室へとやってきた。
この学校の図書室は教室から少し離れたところに位置していて。
放課後にわざわざ立ち寄ろうという生徒は少なかった。
とくに今は部活が忙しい時期だ。
「
なんだこいつは……。
どうしてそういう話になる……。
俺がこいつをここに連れてきたのは、そんなことを話すためではなかった。
なぜ、あの
それが最大の謎なのだ。
「なあ
俺は
図書館の電機は消えていて、夕陽だけが差し込んでいる。
「その……
「は…………?」
訳が分からない……。
あの
だって、俺
トップアイドルからすればノミ以下の存在。
「理由を……聞かせてくれるかな……? 本当に、俺のことが――
そう、俺にはいくつかの
俺の複数ある顔のどれか、それを
「私……ずっとファンなんです……!」
「…………!?」
やはりな……。
「
俺は唾をのむ。
ことによっては、面倒なことになりそうだ。
いや、面倒なことなら、もうなっているが……。
「あの……私! 『よじはん』のファンなんです!」
「はぁ……
「四畳半から始まる異世界神話」――通称「よじはん」――今大人気の、異世界物のWeb出身のライトノベルだ。
アニメ化もされていて、世界中で売れに売れまくっているビッグタイトル。
その作者の名は、
「で……どこでそれを知ったんだ?」
俺は
自分の正体がバレないよう、俺は細心の注意を払ってきたつもりだった。
それなのに、いったいどこから情報が漏れた……?
「あの……私、ずっと先生のファンで! 前に、オーディションを受けたことがあるんです! そのときに――」
「あぁ……」
そういえば、
そして、俺の作品はアニメ化をしている。
となると、やはりバレたのはそこか……。
いや待てよ。
俺はそういう仕事のときも、バレないように変装をしている。
「ちょっと待て。どうやって俺だとわかった!?」
俺がそう言うと同時、
「そのときに――家を突き止めたんです。後をつけて」
「は……?」
「それで、どこの高校に進学するのかなって、調べまくったんです! だからこの高校に」
「え…………? は…………?」
「でも……なかなか勇気が出なくてずっと話しかけられなかったんです。昨日、パンを拾ったときに、これをきっかけにできたらなぁ……って思ってたんですけど……。まさか先生のほうから告白してきてくれるなんて思ってませんでした……!」
「こっわ……」
俺は自然とそう口に出していた。
なんだコイツ……。
今をときめくトップアイドルかと思っていたのに。
その実態はとんでもない奴じゃないか……!!!!
「あの……
「もちろんです! これは私たちだけの秘密です!」
なぜか美咲はとっても嬉しそうに言う。
いやいやこれってそういうキラキラした秘密の共有イベントとかじゃないからね!?
俺、一方的にストーキングされてるし、身の危険を感じているんですが。
「あ、もし信用できないというのでしたら……私の秘密も教えちゃいます! これで、お互いに弱みを握りあいましょう!」
「いや……教えてくれなくていいから……」
俺はそう断ったにもかかわらず。
美咲はまたとんでもないことを言い出した。
「実は私、おっぱいの下にほくろがあるんですよ」
「は…………? ってか…………はぁ!?!?!?!?!」
ちょっとえっちだと思ってしまった自分が嫌だ。
こいつはトップアイドルである前に、俺の厄介なファンなんだぞ!?
俺が今まで一番恐れていた相手だ。
「グラビアの写真とかでは、修整で隠しているので、このことを知っているのは世界中で先生だけです! ね? これでどうですか……? もし信じられないのなら、実際に見てみますか……?」
「い、いや……! いい……!!!!」
くそ……調子を狂わされる。
たしかに
これで一応は俺の正体はバレずに済みそう……なのか……!?
いやいやちょっと待て、いったい誰がそんなことを信じるんだ……!?
ネット掲示板に「
こんなの交換条件でもなんでもねえ!
だが……ここで
そんなことをしたら、コイツがどんな暴挙にでるかわからん。
そういう意味も含めて、コイツの手綱は握っておかねばならない……!
「あの……
「ですね! うれしいです! 私、先生のアニメの声優になるためにこの世界に入ったんです……! まあ、残念ながらオーディションで落ちましたけど……! でも、そのうち絶対に先生の作品のヒロインを射止めてみせます!」
「あぁ……うん……」
まったく……厄介なことになってしまった。
俺はこれから……どうすればいいんだ……!?
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