第2話 罰ゲーム《告白》
「好きです……付き合ってください」
俺は覇気のないかすれた声で、ぼそぼそとそう言った。
もちろん目は死んでいる。
だって別に、相手のこと好きでもなんでもないからな……。
これはただの罰ゲーム。
事務的に済ませて、さっさと終わらせてしまいたい。
「えーっと……ごめん、ね? 私、彼氏いるから……」
だろうな……。
いわゆる陽キャ系の女子には、そうやって断られた。
まあ中には「いやお前絶対彼氏いねーだろ!」みたいな奴にも同じことを言われたけどな……。
面と向かって「陰キャと付き合うとかマジムリー!」って言われないだけでもましか。
俺はそんな感じで、淡々と告白罰ゲームをこなしていった。
まあギャルの子に「てかアンタ誰? クラスにこんなヤツいた?」って言われたのは地味に傷ついたけど。
「よう
俺にこんなバカげた罰ゲームを強制している相手――
そんなに俺がフラれるのが面白いのか……単純な奴は簡単に楽しめていいな。
「てか
あ、そういえば……こいつも同じクラスの女だったな……。
いつも
まあこいつも、見た目だけはいいからどうせ彼氏いるんだろうなぁ。
「あ……えと……じゃあ、
俺はしぶしぶ、気の抜けた告白をする。
いったいなにが面白いのか……。
「ギャッハッハ!」
と、
はぁ……自分で告白させといて、それを笑うとか……どれだけ性格悪いんだこいつら。
「あーしが
まあ、そうだろうな……。
俺もはなから期待してねーよ……とは口に出さない。
さっさと終わらせて、家に帰りたいんだ。
「まあ、これで
まあ、
だからといって俺をストレスのはけ口にするのはやめてもらいたいところだ。
「あ、そういえば……
っち……俺は心の中で舌打ちをした。
「
「え…………」
俺は
たしかに
だが、ここは昼休みの教室。
周りには大勢の観客がいる。
そんな中で、
いくら俺でも、
「いいから行けよ! ホラ! さっさとしろ!」
「う……わかったよ……」
俺は仕方なく、
後ろを振り向かずとも、
「あ、あの……
俺は勇気を出して、
普段なら、俺のようなスクールカースト最底辺の陰キャが、話しかけることさえも憚られるような相手。
トップアイドル――
俺は無謀にも、今からその相手に告白をしようというのだ。
まあ、これはあくまで罰ゲームだ。
今まで通り、事務的に淡々とこなせばいい……ハズだった……!
しかし、
長いまつ毛に、艶のあるくちびる。
それらすべてが、俺を言い知れぬ緊張へといざなう。
正直いって、
俺は
だがしかし、健全な高校生男子にとって「
可能性はないにしても、告白さえしなければ、それは永遠に夢のままでいられる。
だがしかし、ひとたび「好きです、付き合ってください」と口にしてしまうと、その望みは永遠に絶たれてしまうのだ。
可能性をゼロに確定してしまう。
まさにそれは自殺といっていいだろう。
とまあ、ここまでグダグダと自分にいい訳をしたが……。
俺は告白をするしかないのである。
背水の陣――下がれば陽キャに殺される。
これからの平穏な学生生活のために、俺は
「好きです……! 俺と……! 付き合ってください……!」
言えたじゃねえか……。
これまでで一番腹から声を出した気がする。
その瞬間、クラス中の視線が、俺と
まあもちろん、その答えは誰もが予想済み。
俺はフラれる……ゲームオーバーだ。
そのはずだった。
「はい、よろこんでお願いします。
ん……?
これは握手会か……?
確か、彼女はそういう活動もしていたはずだ。
そうだ、俺はトップアイドル
自分を
いや、決して否である。
俺は正真正銘、
そして今、告白を受け入れられた唯一の人間である。
は……?
あの、
意味が……わからない……。
「あの……
「あたりまえじゃないですか! 私、今本当にうれしいんです」
「そ、そう……お、俺もだよ……」
そこでチャイムが鳴ってしまい……。
その後のことは有耶無耶になった。
後ろで
というか、クラスメイト全員から変な目で見られた。
男子からは羨望と嫉妬の目。
女子からは「なんでアイツが?」という奇異の目。
そして
どうやら俺は、スクールカースト最底辺にして、日本のトップアイドルを射止めてしまったらしい。
「はぁ……俺の高校生活……どうなるんだ……?」
このとき、俺の「平凡な高校生活をひたすら平穏に送る」という目標は永遠に絶たれてしまった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます