第4話 犬

 人間ほどもあるゴールデンレトリーバーと、だだっ広い路を歩いていた。

 犬は黄金の毛並がざらざらしていて、吐く息が荒く、私の足に絡みつくように歩くので道々転びそうになる。私がいやだと思っていると、ふいに犬が自分から檻へ入っていって、出て、また入っていった。つくりものめいたまっ黒の瞳がこちらを見ており、爪がしきりに地面を掻く音が、硬く耳を叩いた。

 私はやっぱり犬と歩いていくことにした。

 犬は、私のセーラー服が気になるらしく、膝のあたりで揺れる裾をしきりに嗅いではふんふんとうなっている。ぬうと手をのばし鼻を撫でてやると指先がすこし湿ったので犬の毛皮でぬぐった。犬はうれしそうににんまりした。

 ふと遠くから祭囃子が聞こえて、なにかがぞろぞろ近づいてくる気配がある。私と犬は路の端に身を寄せあって待っていた。

 囃子はだんだん大きくなり、地平に赤い塊がぽかりと見えてきた。やがて山車が現れて、招き猫を大量に積んでいる。その周りをたくさんの人間がわあわあ叫びながら取り囲んで、運んでいるのだった。私の頬に犬の生ぬるい息がかかる。山車も、人も、どこもかしこもまっ赤で、ただ山積みにされた招き猫だけが、陶器でできたからだを白く輝かせていた。

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すこし・ふしぎ 蛇はら @satori4

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