第6話 『魔喰い』と眷属


【●月×日】


 桔梗にエルの召喚を頼んでみる。

 待っていたら、エルが消えた。


 眼前には、桔梗。

 何で俺を召喚すんだよ!……待てよ?


 てへぺろってムカつく、と思いつつステイタスを確認した。


” コレトリシアの民 笹倉芳人 ”


 世界への紐付きが移動していなかった。 

 召喚されたからといって、呼ばれた世界に紐づくとは限らない?

 

 メモにある地球召喚を『保留』に移動させた。


【●月×日】


『芳人の世界を見たい!』というエルを、秋葉原に連れて行く事にした。

 ふと思い立ち、メニューの通販画面で金貨を多めに逆換金し、予約する。

 

 メイドカフェは失敗だった。

 幻影の魔法を使わせていたのに、レイヤーを見て猫耳を出しやがった。

 

「うにゃにゃー!む?これでいいのか?にゃー!」


 店内で写真を撮られ続けるエルを横目に、選択肢を増やしては消していく。


「いい天気とは、こういう事なのだな!青い空、輝く陽光!夢だった!」


 いや、それが普通だぞ?

 魔王領、千年に一度くらい晴れてやれ。


 夜はヘリでの東京湾ナイトクルーズ。

 エルはずっと俺の袖を握りしめながら、夜の光の群れを眺めていた。


 あと十日。

 どうなるかはわからないが、少しくらいは、な。


【●月×日】


 妙にくっついてくるエルと共に、魔王の森を歩いた。

 そして、出食わした魔獣の能力に身体が震えた。

 

 魔食い。

 自分より強い敵に取り憑き、乗っ取る。


 エルの手の中で藻掻く魔喰いの情報を、メニューの中でピン留めした。

 次々と湧き上がるイメージに、鳥肌が立った。


 乗っ取り。

 消滅。

 能力。

 輪廻。

 俺の概念魔法。


 そして。


 何故か浮かない表情のエルに、俺は持ちかけた。

 俺と、眷属の契約を結ばないか、と。

 

「け、眷属?!魔王をにするなぞ聞いた事がないが、芳人なら、いい、ぞ?」

「おい、何を言っている?」

「だが、な?魔族は転生が前提だ。の必要がないのだ。で、でもだな?主となった、芳人となら一度くらい、でもでもこんにゃ格好をしろと言うのは気恥ずかしいうにゃむにゃにゃ」

ラノベコミック、いつまで読んでんだよ!」


 拳骨を落として、エルが持つラノベを森の上空に投げた。

 私の楽しみがぁ!というエルの叫びは無視した。


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