第2話 ズルいズルいズルい……にゃっ!
「んん……んああ、あふ……頭、
この夢を見た後は、いつもこうだ。
「……シャワー、浴びるかな」
魔王領になってから、一度も日が差したことがないと言われる森。
相変わらず
が。
俺は気にならないし、何より森に用がある。
魔族に適用されている、輪廻の仕組みについて、だ。
●
(封印したとはいえ、……魔王と魔族はこの地がある限り復活し続ける。なら逆に、魂が消滅する方法だってあるはずだ)
大切な家族がいなくなった日本に。
大切なものなど作りようがなかった、この世界に。
もう、関わりたくない。
それだけなのに。
まだその方法を探せずにいる。
日本、そしてこの世界の輪廻から外れなくては。
その為に俺は生きているのだから。
父さん、母さん、佳奈姉さん、夢花。
幸せを分かち合いたい、大切な家族はもういない。
桔梗は眷属に、と言ってくれてるけど、無理だ。
大好きな家族がいなくなったという事実を、直視したくないんだ。
俺は……弱い。
『芳人、大切な人と同じくらい自分も大事にしろよ?』
『今日はよっ君の大好きな唐揚げ!ふふっ♪』
『よっちゃん起っきろー!……何よ、あと五時間ってえ!』
『よっちゃ!よっちゃ!ぎゅ!ゆめ、ぎゅー!』
あの事故の時、俺は一緒にいれなかった。一緒に死にたかった、と何度泣いたか、わからない。
結局、立ち直れなかった俺は学校で虐められた。
引き取られて、厄介者だった。
使い勝手がよさそうだ、と女神に召喚された。
事故から後は、自業自得の
そう思う。
立ち直ろうなんて欠片も思わなかったんだから。
●
(食ったら、魔王城近辺でも行ってみようか。ん?これうまい……鑑定)
モックの『全開!テリヤキバーガー』と表示された。
(もうひとつ食いたいな……あった。ナイス俺)
ストレージのリストで検索して、出来たての状態の同じ物を取り出す。
一昨日、桔梗の所に行く前に買ったものの一つだ。
コーヒーもついでに取り出しながら、桔梗の言葉を思い出す。
ふと思い立った、日本古来の『縁切り』。
(『縁切りは、神の権能や効能ではない。徳川家の姫の想いの結晶が一つであり、人には及ぶかもしれんが、理に
ばん!
ばんばん!
叩かれる窓。
つまり。
俺の不可侵結界を抜かれたという事だ。
(魔王以外にもまだまだ強い奴はいたんだな……。ま、気を抜きすぎてたか)
立ち上がってスタスタ、と窓際に近づいていく。
ばんばん!
ばんっ!
んにゃにゃ!!
「食べたい食べたい、ズルいズルいズルい……にゃ!」
首すじ迄黒い紋様が彫り込まれている猫の獣人が窓を叩いていた。
「おい、何をしてんだ。猫獣人のマネすんな。何の用だ」
「久しいな……にゃ!」
しゅばばっ!
「そこは、久しいにゃ!でいいだろうが。構えもウザイ。大体……何しに来たんだよ、お前」
魔王、エルフェルナ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます