漆:狐が人に化けた話
はてこの話はいたしましたでしょうか。一匹の
さてこの雌狐、変化の術にも
つまり、男の妻に、でございます。
なんとも呆れた話ではございますが、これでもしばらくは上手く
ええ、はい。しばらくは、でございまして。
やがてこれはおかしいと気付いた男にがんじがらめに縛られて、煙でいぶされ棒で叩かれ、泣く泣く正体を現したとのことでございます。さて、その後に煮て食われたか焼いて食われたかは存じません。
それはまあね、村の男どもを取っかえ引っかえ
……いえいえ、獣の浅ましさなどと
申し上げましたでしょう。この雌狐、頭の出来も良い方でして、見事に男の妻に化けおおせたのですとも。
はて、その本物の妻はいったいどうしたのか、ですか? さあて、とんと聞き及びませんが。どこの誰といったいどちらへどうなったのやら。女というのはとんとまあ。
男なんてのは、化かされたままのほうが良いのかもしれませんねえ。
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