第4話 連発
ミスターハラキリとして、私の名前はハリウッド中に轟いていた。
あの大スター、エマ・ストーンとアン・ハサウェイとキスをした謎の日本人として、TVの取材を受けることになったのだ。
そして、その様子を興味深く見ていた大物プロデューサーからお呼びかかった。
ちょうど、日本人役を探していると。
なんという偶然が重なり、私はハリウッドのちょい役としてデビューすることになったのだ。
エマとアンには感謝してもし切れない。
この先に、キャメロン・ディアスがいることを信じて今はこの映画を頑張るしかない。
心にねじり鉢巻きをして、撮影所に向かう。
いるわいるわ。
右も左もハリウッドスターが。
「ヘイ、ミスターハラキリ。今日はよろしくね」
そう言ってきたのは、なんと今をときめくアニャ・テイラー=ジョイではないか。
彼女はネクストブレイク間違いなしと言われるキュートなスター。
いや、すでにブレイクしまくっており、次々と話題作に出演。そんな彼女の出世作は「ラストナイト・イン・ソーホー」だ。
ホラーと美女は鉄板であり、当然、観客のハートを鷲掴みしたのだ。
「あなた、エマ・ストーンとアン・ハサウェイとキスしたんでしょ。私だってしたことないのに」
その頃、私は簡単な英語なら喋れるようになっていたので、なんなくアニャとコミュニケーションが取れるようになっていた。
「ユーアー、ラッキーボーイ」
と指を差されて、笑いながら去って行った。
な、なんて可愛いんだ。
ブレイクするのが当然だと思ってしまう。
一瞬にしてハートを射抜かれた。
見惚れながらその後ろ姿を追っていくと、なんとなくだが何やら不穏な予感がした。
さっきから風が強い。
びゅうびゅう、セットの間を強い風が通り抜けていく。
案の定、嫌な予感が当たった。
風に揺られて、置かれた照明器具がぐらぐらと不安定になっていたのだ。
思わず駆け寄る。
なぜか、そのとき、撮影スタッフは持ち場を離れており誰一人として危うい状況に気が付かなかった。
そして、アニャが脇を通り抜けようとしたとき。
「キャー!」
高さ3メートルはあろうかと思われる大型照明がアニャに向かって倒れてきた。
危機を見越して事前に駆け付けたことが幸いして、彼女のピンチに間に合うことができた。
腕を伸ばして、かっこよくアニャのピンチを救う。
そんなイメージを思い浮かべたが、現実は違った。
実際は身軽に逃げたアニャと勢い余ってもつれあっただけだ。
逆に「ミスターハラキリ、アーユーOK」と心配される始末。
どうでもいいが、彼女が無事でよかった。
倒れた照明を前に笑い合う。
「ヘイ! どうした」
だが、そんな私に背後からアニャのマネージャーらしき人が駆けつけてきた。
すごい剣幕で、詰め寄ってくる。
どうやら、私が何かをしたと勘違いした様子。
誤解を解こうにも、スラング連発で肩をどんと叩かれて、そのままよろけてしまう。
この騒ぎに野次馬たちが集まる。
アニャは二人の間にたち、私のフォローをしようとしたが、野次馬に押されるがままにそのまま私の胸にダイブ。
「あ」「oh」
勢いそのままにアニャともキスをしてしまった。
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