第5話 怒涛
ミスターハラキリはハリウッドはおろか全米中にその名が知れ渡った。
どうやらこの短期間で、
エマ・ストーン。
アン・ハサウェイ。
アニャ・テイラー=ジョイ。
このトップ女優と連続してキスした日本人は誰だと。
てゆうか、そんなやつは日本人じゃなくてもアメリカ人でもいない。
つまり、世界中で私しかいなかったのだ。
今はSNSの時代である。噂が噂を呼び、どうやら偶然が重なり3人とキスをしただけなのだが、こんな具合に変化していた。
ミスターハラキリとキスをするとハリウッドで成功できる。
と。
そんな馬鹿なと思ったが、熱狂はすぐに私を襲った。出演するちょい役の出番が終わると、着の身着のままニューヨークへと招かれた。
新作映画のレセプションに「時の人」扱いで、私を呼んでくれたのだ。
ただ、キャメロン・ディアスに会いたい一心でロサンゼルスに降り立ったはずが、人生というのはわからない。
レセプション後のクラブで、私を一目見ようと、次から次へと名だたる有名女優がやってくるではないか。
ハーレイクイン役で注目を浴びたマーゴット・ロビー。
ウィンターズボーンの演技が高く評価されたジェニファー・ローレンス。
あのナタリー・ポートマンまで。
彼女については、今さら説明するまでもない。
誰しもが知ってる、超が100回つくほどのトップスターだ。
ただ一言。
「ブラックスワン」は最高だと、言っておく。
こ、こんな奇跡が起きるなんて。
だが、当然のことながら彼女は、一時の話題をさらっただけの私といきなりキスをするわけではない。
「ヘイ、ミスターハラキリ。キスOK?」
冗談交じりの囁きに、当然、よろしくお願いします、と日本語で答えるだけだ。
そして去り際に、ふーん、あなたが、あの。
というような視線を送られる。
だが、こんな美女たちから興味を1ミリでも寄せられるだけで、奇跡そのものだ。
会場は熱気がむんむんしている。
皆、酒を飲み、何かが起きることを期待している。
ミスターハラキリがいれば、何かが起きる。
そして、それは起こった。
酒を飲んで酔っ払っているのか、視界がぐらつく。心なしか皆が揺れているように感じる。ゆらゆらと、それは人だけでない。テーブルも、ミラーボールも、何もかも。
「キャー!!」
やはり、それはアルコールが成せる錯覚ではなかった。
なんと、滅多に地震が起きないニューヨークで突如として、地震が発生したのだ。
幸いにして、普段地震に慣れている私からすれば、恐らく震度2ぐらいの大した地震ではないと理解したが、皆はパニックに陥った。
我先に、出口へと殺到するなか、必死に皆をなだめる。
「OK、OK、地震はすぐにおさまります」
だが、その呼びかけは誰の耳にも届かなかった。
混乱した群衆の押されて、次々と名のある有名女優が私の胸にダイブ。
マーゴット・ロビー。
「あ」「oh」
ジェニファー・ローレンス。
「あ」「oh」
ナタリー・ポートマン。
「あ」「oh」
トップスターとのキスの嵐が巻き起こる。
そして、ついには――
「あ」「ohhhhhhhh~!!!!」
勢いそのままにメリル・ストリープともキスをしてしまった。
お、大御所すぎる……っ。
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