第1話「マッカーサー・パーク(ライブ)」アンディ・ウイリアムス

 もし誰かの声をもらえるとしたら、あなたは誰の声を選ぶでしょうか?


 普段話す声、と捉えた人は戸惑うかもしれません。

 声優になりたいと思っている人は、憧れの声優の名前を挙げるかもしれません。

 カラオケが好きな人は、好きなヴォーカリストの名前を挙げるかもしれません。


 私はカラオケにはもう20年位行ってませんが、誰かの声をもらえるとしたら、やっぱりヴォーカリストを選びますね。


 何人か候補はいますが、う~ん、選ぶとしたら「スピッツ」の草野マサムネさんですかね。あのハイトーンで「ロビンソン」を歌えたら、気持ちいいでしょうねえ。


 私の音楽のメイン・フィールドはプログレッシブ・ロックですが、一応プログレ以外の音楽も聴いてはいますので、その辺から話を始めましょうか。


 私と音楽との出会いは、いつだったのかわかりません。小さい頃はテレビで歌番組を結構やってましたし、年末の紅白歌合戦も凄い視聴率でした。


 一番最初に聴いた曲が何だったかなんて、思い出せません。ですが、一番最初に買ってもらったレコードは覚えています。

 「黒ネコのタンゴ」という、子どもが歌って当時のオリコンチャート1位になった曲でした。


 最初に自分で買ったレコードも覚えています。小学生のときに買った、アンディ・ウイリアムスの「ある愛の詩」でした。


 当時、NHKで「アンディ・ウイリアムス・ショー」という、歌を中心にしたエンタメ番組を放送していました。勿論アメリカで作られた番組でしたから、字幕放送だったと思います。


 子どもながらにそれを見て、「この人、歌がうまいなあ」と感心したものでした。アンディ・ウイリアムスは、映画音楽などを中心に歌うポップ・ヴォーカリストで、「ある愛の詩」も当時話題になった映画でした。


 当時、同級生で洋楽を聴いていた人はほとんどいなかったと思います。ませていたんでしょうね。


 中学生になってから、小遣いを貯めてアンディ・ウイリアムスのアルバム(レコード)を何枚か買いました。当時でもアルバムは二千円ぐらいしたんじゃないかな。

 だから、おそらく小遣いのほとんどをレコードに費やしていたんでしょうね。


 その中で、2枚組のライブ・アルバム「アンディ・ウイリアムス・ライブ・イン・ジャパン」に収録されていた「マッカーサー・パーク」という曲が好きだったのを、最近になって思い出しました。


 このライブ・アルバムはレコード盤しか持っていないので、CDを探してみましたが、単体ではなく高価なボックス・セットでしか売っていないようで、ダウンロードでも売られていませんでした。


 YouTube を探したら、ありました。演奏時間、8分もあったのか。


 それを聴いて気がついたんです。・・・これ、プログレじゃね?


 アンディ・ウイリアムスを知っている人は、「んなアホな」と思うでしょう。


 ここで、プログレッシブ・ロックがどんなものなのか、少し説明させてください。


 プログレッシブの意味は「前進する」あるいは「進歩的な」という意味ですが、単に「革新的な」あるいは「斬新な」といった意味だけではありません。


 私個人の見解とお断りしておきますが、プログレは、


①芸術的なロック(一時期、「アート・ロック」と呼ばれるジャンルがあり、その後プログレに吸収されました)

②インストゥルメンタル・パート(楽器のみで演奏されるパート)主体のロック

③複数のジャンルにまたがるロック

④定型的でないロック


のうちのいずれか、または複数に該当するロックと考えています。


 アンディ・ウイリアムスの「マッカーサー・パーク(ライブ)」は、このうち主に④に当てはまると考えました。


 当時のポップ・ミュージックの定型的なスタイルは、今の曲でも多いんですが、


Aメロディ(以下「メロ」と略記)→Bメロ(サビ)→Aメロ→Bメロ(サビ)→(短いインスト)→Bメロ(サビ)

 ※「インスト」はインストゥルメンタル(楽器演奏のみ)の略


という曲構成で、演奏時間はほとんど3分前後でした。


 それに対して「マッカーサー・パーク(ライブ)」は、


Aメロ→Bメロ(サビ)→Aメロ→Bメロ(サビ)→Cメロ→長いインスト→Bメロ(サビ)


という定型から外れた曲構成になっていて、特に注目すべきはCメロの後の長いインストです。2分以上あるのではないでしょうか。


 このインストは基本的にブラス・セクション(金管楽器で構成されたパート)ですが、テンポが急に速くなって、エレクトリック・ギターとドラムスがフィーチャーされる展開だったので、「ロック」と言ってもいいんじゃないか、と考えたわけです。


 ロック・アーティストでも、たまにはバラードをやるでしょう?ポップ・アーティストが、たまにはロックをやってもいいんじゃないでしょうか。


 それにしても、私がプログレ好きになる要因がこんな昔にあったとは、意外な発見でした。

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