第11話 電気保温釜

1時間が経過した。まだまだ新鮮な彼、彼は保温釜の中、取り上げられるのを待っていた。3時間が経過、彼の肌ツヤには余裕があり、にっこりと笑って健気な笑顔を見せてくれた。


保温釜から他の友達が掬い上げられていく中、彼は他の子たちと混ざり合いながらも保温釜に残り、いつまでも掬い上げてもらえない。


12時間が経過。掬い上げる大人たちは寝てしまったので彼も眠ることにする。


22時間が経過。保温釜の蓋は開くことがなく時間が過ぎた。


30時間が経過。彼の体の水分は失われ、カチカチと音を鳴らしている。


保温釜の蓋が開く。

「もうダメだね」と声がする。保温のスイッチが切られて釜の中でカラカラになっていた彼は保温機によって与えられていた体温を失い、息をしなくなった。


彼を産み落とした大人が肩を落として啜り泣く時も、他の無数の保温機で、別の彼等は誕生していた。

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