第6話 不幸の赤い鳥

「980円になります」

毎日レジ打ちの仕事をしている私、職場は家の近くのスーパーマーケットで、品出しやレジ打ちの仕事を始めてから一年が経った。


私の住む街はとても治安が良い。職場の人たちも、お客さんも良い人たちばかりだ。毎朝ベランダにやってくる雀も、椋鳥も、地域猫も礼儀正しく優しい。


良いものに囲まれて私は思う、何も憂うことがない、寝ても覚めても陽だまりの中にいるような私。このままでいいのだろうか?穏やかな場所で年月を重ねた先には何が待っているのか。この穏やかな日々はありがたく、しかし何のストレスもない日々に疑問を投げるという行為をしていたときだった。


「余計なことを考えるんじゃないよ」

レジ打ちの仕事の合間、職場の中でも長く在籍している男性から強めの口調で抑えつけられるように言われた。そしてとても怖い顔をしていた。彼は私の返事を待たずに仕事に戻り、優しい人になっていた。


職場も、家も、私には青く見える。幸せの青い鳥…というくらいだから、私にとって心地よいものは青く見えるのだろうか。職場の彼の言葉も、口調は強かったが青い色をしていた。


帰宅して、いつもはあまりつけないテレビの電源を入れた。「海外で飛行機が落ちました」と告げるニュース番組、「乗客に日本人はいませんでした」と続いた。ニュースを読み上げる声も、画面から発する絵も青い色だった。


なんだ、またいつものゆるい幸せか…と幸せであることにため息をつく私。ため息の色は少し赤く色づき、赤い鳥となった。


赤い鳥が言うには明日の午後二時に離陸する海外に向かう飛行機に乗れば赤い色が見られると言う。私は赤い鳥からその話を詳しく聞き、旅行の準備を始めた。これから起こる赤い色の時間に胸の鼓動が高まり、私の思考も目の前の景色も赤い色に染まっている。


翌日、目が覚めると赤い色は消えていた。飛行場に向かう私、飛行機に乗り込む私、ずっと青い色を見てる。昨日まで見ていた赤い色はなんだったのか…と不貞腐れた思いでいると飛行機は飛び立ち、数分後、私に赤い色を見せてくれた。

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