光奏〈kousou〉

丫uhta

光奏〈kousou〉


 あるいえにピアノをくのが大好だいすきな少女しょうじょました。


 少女しょうじょは、まれき、普通ふつうひととはちがった世界せかいえてました。


 それは、共感覚きょうかんかくばれる物でした。少女しょうじょには、まわりのおとひかりえていました。


 少女しょうじょは、自分じぶんかなでるおと世界せかいかがやかせるのが大好だいすきでした。


 しかし、少女しょうじょは、ある、ピアノをくのをめてしまっていました。


 それは、少女しょうじょはじめてのコンクールでの出来事できごとでした。


 少女しょうじょは、コンクールにけて、ピアノの練習れんしゅう人一倍ひといちばいしていました。


 その甲斐かいもあって。れて少女しょうじょは、はじめてのコンクールだったにもかかわらず優勝ゆうしょうをすること出来できました。


“どんなひかりえるんだろう? きっと銀河ぎんがよううつくしいひかりちがいない!”


 そんな、コンクールまえ少女しょうじょ期待きたいとは裏腹うらはらえたひかりは、想像そうぞうぜっするものでした。


 優勝ゆうしょうかざった少女しょうじょは、大勢おおぜいひとから歓声かんせい拍手はくしゅけました。


 それは、たとえるなら、ひかり災害さいがい


 まぶたじても、かおおおっても、がすようひかり少女しょうじょは、全身せんしんひかりあめつらぬかれたようかんじていました。


 またたあたまなかしろになり。まえうしろもからくなった少女しょうじょは、表彰式ひょうしょうしき最中さいちゅう意識いしきうしなってしまいました。


 ◆


「もう、ピアノなんかきたくないよ……っ!」


 こわくなった少女しょうじょは、きながらおやいました。


 ピアノのせいじゃないことは、少女しょうじょかっていました。


 しかし、どうしても、げたかったのです。


 けば、初出場はつしゅつじょうでコンクールで優勝ゆうしょうした無名むめい天才てんさい少女しょうじょとして、取材しゅざいほどになっていました。


 そとれば、こえけられるたびにあのびたひかりおもしてそのうずくまってしまいます。


 すっかり、おとひかりことこわくなっていた少女しょうじょは、そとことも、友達ともだちあそことけるようになってきました。


 そんなある少女しょうじょ誕生日たんじょうびことです。


友達ともだちてるわよー!」


 ドアのこうから、おかあさんのこえこえた。日向ひなたようひかりえる。


「げほっ!げほっ! 今日きょう風邪かぜいてるかかえって。げほぉ!」


 少女しょうじょは、わざとせきをしました。


 そのときでした。


 ドッ!ドッ!ドッ!


 ドアのこうから腕白わんぱく足音あしおとちかづいてました。線香せんこう花火はなびようひかりえる。


 ドン!ガチャァ!!


 なにかがぶつかるおと同時どうじにドアがいきおひらいた。スポットライトのようひかりえる。


 少女しょうじょは「きゃ!」とおもわず布団ふとんかおおおいながら悲鳴ひめいげました。


「いってぇええ!」


 そこには、少女しょうじょ友達ともだちである、幼馴染おさななじみの少年しょうねんでした。篝火かがりびようひかりえる。


 リュックを背負せおった少年しょうねんは、おでこをさなえながら布団ふとんくるまる少女しょうじょました。


「で、てけ!てけ!」


 少女しょうじょは、少年しょうねんうやいなや《おび》怯えながらさけびました。


「うるさいぞ!」


 少年しょうねんは、部屋へやひびほどこえいました。太陽たいようようひかりえる。


「あなたのこと、すごく心配しんぱいしてたのよ? すこしずつでいから克服こくふくしていきましょ? 無理むりをする必要ひつよういの。でも……今回こんかいだけは、頑張がんばってみない? それで無理むりそうならかえってもらうし、あそばなくてもいわ。……それじゃお菓子かし用意よういするわね」


 おかあさんは、心配しんぱいそうにうと部屋へやあとにしました。太陽たいようかがやかわようひかりえる。


 部屋へや少年しょうねん二人ふたりきりになり、少女しょうじょは「もう勝手かってにして…!」とごといながらかくれるよう布団ふとんもぐりました。


おれ、……ずっと、おまえがどうすればわらってくれるか、おばちゃんとはなしてた」


 少年しょうねんは、背負せおってるリュックをおろして、なかから鍵盤けんばんハーモニカをしました。誘導灯ゆうどうとうようひかりえる。

 

「それでおもしたんだ。おまえがピアノをはじめるまえに、おれ演奏えんそういたらずっとわらってたよね? 下手へたくそって」


 少年しょうねんは、鍵盤けんばんハーモニカのパイプをくわえた。蝋燭ろうそくようひかりえる。


 パブピ~!ブビビピー!


「……っ!」


 それが、なんきょくの、どの部分ぶぶんなのか、少女しょうじょには、まったからなかった。


 それでも、少年しょうねんは、かおをしかめながら必死ひっし演奏えんそうをしていた。夜空よぞらおおくす大量たいりょう流星群りゅうせいぐんようひかりえる。


 ◆


 演奏えんそうわり。少年しょうねんは、いきあらげながら「は、ハピィばぁす……デイ…!ぜぇ!はぁ!」と言った。どうやら、誕生日たんじょうびきょくだったらしい。


 カーテンから朝日あさひようひかりえると同時どうじ少女しょうじょは、自分じぶんがピアノをはじめたおもしました。


 それは、幼稚園ようちえんのピアノで少年しょうねん国歌こっか演奏えんそうしたことだった。


 かずある音楽おんがくなかで、選曲せんきょく国歌こっかだったこともそうだが、なにより下手へたくそだったこと、それよりも、えてくるひかりが、ながほしようひかりだったこと心底しんそこたのしそうに姿すがた自分じぶんいてみたいとおもった。


「……ぷっ!あはははははは!!下手へたくそぎるよぉ!」


 かおさえていた少女しょうじょは、れなくなって、おなかかかえながらわらった。

 わらいと同時どうじなみだめどあふれてた。うそようこころ一瞬いっしゅんほぐれのだ。


何時いつぶりだろう?こんなにわらったのは?”


 なみだぬぐいながら、少女しょうじょは、布団ふとんからた。


「…! なぁんだ、おもってたより元気げんきそうじゃん! はじめは、こわかったけど、かった!」


 少年しょうねんは、満面まんめんみをかべて少女しょうじょた。

 きながらもうれしそうな少女しょうじょは「さっきは、ごめんね」となみだそでぬぐいながらピアノに近付ちかづいた。


「……はぁ。もう、あんたの演奏えんそういたら。あたしもきたくなっちゃったよ!」


「おぉぉ! そうか!それなら音楽おんがくおしえて! じつはね、誕生日たんじょうびきょく楽譜がくふからないから、うろおぼえでやってたんだ!」


 少年しょうねんは、そううとふたたびパイプをくわえた。


 根本的こんぽんてき解決かいけつには、なっていけど、解決かいけつすることだけが正解せいかいじゃない。

 問題もんだいったうえ問題もんだいとして、そのままれることあるいいは、正解せいかいえるのかもれない。


 少女しょうじょくピアノのおとは、満月まんげつようひかり

 少年の吹く鍵盤けんばんハーモニカは、流星群りゅうせいぐんようひかり


 ふたつの旋律せんりつは、よる暗闇くらやみらす道導みちしるべごとく、ひかりかなでていた。

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光奏〈kousou〉 丫uhta @huuten

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