第10話 ナンカ
セリは寝転がってから、近くにやって来たコに視線を向ける。
「君は、なんだろうね?」
セリだって気づいている。“突然に出てくる”この黒いコは、魔物ではないけど存在が少し虚ろに“視える”。
(何か変わった存在、敵意はナシ。)
そっと手を近づけても逃げないし、嫌がらない。セリはそのまま、モフっと毛並みを触らせてもらった。ナデナデ…
「王都に来るまでに、会ったコだとは思うけど。」
「にゃー」
「…にゃあ」
真似て言ってみるが、何かの答えは出なかった。
「寝よっか。」
深く考え出すのをやめてすぐ切り替えて、寝る体勢に入ったセリだった。
もう昼間をだいぶ過ぎた頃、カナンが部屋に訪れる。
「セリちゃーん入るよー、ってなんか居るしっ!」
ロードは立ち入り禁止!になったセリの部屋。
“ナニカ、居る。”
セリを呼びに来たカナンは、焦りながらも現状を把握しようとする。その声に即、駆けつけたのはロード。
「セリ?!無事か?」
「ロード?」
眠い声がのんびり返された。セリには、2人が何に慌てているのか分からない。それにまだちょっと寝惚けている。カナンが無言で指差す先には、黒いコが丸まっている。
「お昼寝、友だち。」
一緒に眠っていたふわふわを触って良いか見ると、眠そうに片目を開けて、また閉じられた。少しだけ撫でた。ふわふわの黒い毛が指に気持ち良い。
そんな和む様子だがロードが堅い口を、開く。
「そいつ、…オスか?」
「ソコか?」
カナンがロードにツッコミを入れた。2人の警戒が少し緩んでいるのは魔物ではなく、妖精の類いだと分かったからだ。近づいても特に反応しない相手、危険は低いだろう。どんなヤツなのか知れないが、一度見かけている存在だ。
ロードも、セリが受け入れているらしいので敵意を納めている。そんな判断をすんなりした2人に、セリはのんびり答えた。
「女の子、だと思うんだ。」
「え、どうやってわかったの?」
確認したのか、勘なのか、確かめたのか??
「なんとなく。」
確信めいて答えるセリに、それ以上聞く事もなく。とりあえず部屋を出てキッチンに連れて行った。黒いのはそのまま寝ているらしいので、触れずにそのままだ。
「まだ寝てるみたいだし」
そのまま寝かせておこう。害はないだろうし、セリの荷物も特に置いていないので問題もない。
やってきた3人。キッチンに居たシュルトが、セリに遅い昼食を勧めた。
甘いパンケーキとサラダ、味付きとり肉。
トロリと溶けるバター、花の蜜は自由にかけて良いと言われて慎重に注いだ。
欲張り過ぎず、多めに。
食事中はロードが椅子になっていた。これが普段通りの様子になっていくのだった。
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