第6話 夜飲み

「ナイフを新しくできるかな?」


セリが持つ武器として持つのは、使い込んだナイフは採取用でかなり切れ味が悪くなっている。そんな話をすれば、カナンがお勧めの冒険者・御用達の店に案内してくれると約束してくれた。


温かな食事が終われば、今日も一人で眠る夜だ。教会でも一人寝ではなかった、兵士の下働きの時はひっそりと隅で寝ていた。


(寂しいのかもしれない。)

「オレと寝る?」


セリの様子を見て声をかけるもカナンは冗談であって、断り文句がくると思って言ったんだが?セリは目を輝かした。あれ?


「ごめん、ロードが恐いわ。」


先にカナンが断ったので話は流れた。セリは早々に諦めて、本を持って自室となった部屋に戻る。


前向きに明日の事を考えようとした。

色々買う事になるとペンと紙があれば、文字の練習ができる。


(薬は臭いから別の場所でやれると良いな。)


セリは、実利をとる。

可愛い物や欲しい物を与えたいという意図と、ズレがあった。それでも、ロードが色々と爆買いするだろう。『金はある』と素で言う男だ。


「オレの買い物も入れれば、買ってくれるかもなー」ちょうど仕事が変わって買い時の良いタイミング。ロードの暴走を止める役目には防御力を上げたいところ。


セリを前にしたら、カッコつけて全て購入するだろうなんて冗談半分で話し、シュルトと呑む食後の酒を開けた。


「買う楽しみも、セリには覚えて欲しいのヨ。」


清貧な教会の暮らしだったのなら、物を手にするのに慣れていないか。配慮も経験も色々させてみたい。


「もちろん、セリの様子を見てヨネー。」

「オレはロード担当なのね〜」


つまみと酒を飲む2人。


「ソウヨ頑張っテ。セリは直ぐには無理でも、慣れてくれるカシラ。」

「ん〜?服に、部屋の家具だろ?玩具も必要かなー。」


貴族のように、商人を招いてよりは買いに行く方が好みや興味がわかるだろう。良い酒に食事がある生活を享受する身として、しっかり動きますかねとカナンは結論づけて気にしている事を口にした。


「教授と雇い主は、どうするのかねー。」

「そういえばここ、拠点として使っていいの?」


この建物はキースの口利きで使用できているのだ。本人は仕事に出ているが、王都の中心に直ぐ行ける、王城にも近い場所。


「庶民には縁のない土地、ヨネ。」


コネ、資金、伝手。どれほど有ればここに住めるのか、シュルトの算盤では出ない。


「オレも王城に呼ばれんのかなー」

「マァ、キースの御付きも必要よネ。」


可能性はある。待機命令。所属が変わったカナンは、準備金と事務処理が済めばキースの管轄下に入る。出世になるのか?任務継続の感覚だが、変化が楽しみでもある。


この人族のシュルトとの付き合いも続く。皆、セリを中心に動き出す。獣人が求めてやまない番<ツガイ>を囲い込むだろう竜人は、どうするんだろうな?


「冒険者稼業か、面白そうだな〜。」


表情が動かないのに慌てふためくロードと、素直なセリちゃんと過ごす日々を想像するだけで楽しそうだった。

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