第5話 王都の家

12歳は、まだ子供だ。心身の保護、保護者も要る。しっかりしている分、まだ成長途中であると見ている。


直ぐに、下級ポーション作りの材料や道具を求めてきたセリに『変化に適応するのが先である』と、休ませている。


セリは休息の大切さはわかっているようで、本を読んだり昼寝をしたりとのんびり過ごしていた。暇を持て余さないよう、本を用意したら温順しく読書して過ごしている。


まだ短い付き合いだが、性格的にマイペースだ。獣人に嫌悪感はないようで、後はロードとの付き合い方にゆっくりと慣れてくれれば良いと保護者の面々は思う。


大変なのはこれからだが、それ以上にセリに居心地に良い暮らしを送ってもらおう。その努力は惜しまないつもりだった。



そのセリの最近は自室での昼寝をする。のっそりと身体を伸ばす処は、ベッドではなく床にクッションを積み上げ、囲まれたセリの寝床。小動物の巣のような状況で、なんとなく寂しさを紛らわせていた。


壁の向こう側、透けて見えるならロードが眠っている方向を見る。


(邪魔をしちゃいけない。)


もう一度、寝転がった。セリの甘えであっても、受け入れてくれる存在は憧れだった。教会の子として育ったセリが自立心を持ち早熟だ。


本を読もうか、キッチンに降りて行って、手伝いができないか聞くか?とソワソワする気持ちに寝れないな、と察する。


「のんびり、は難しい。」


窓の外は、木々の緑が見える。雪の白は、地面にもない処だ。


「んー」


ゴロリと寝転がる、眠くない。贅沢な事に、暇だと感じている。怪我をした時は別として今まで、ずっと動いていた。


(ボーっとできる時間は、贅沢モノ)


そうしていると、黒い毛の物体に気づく。

あんなクッションあったか?と近づいてみると、もぞっと動いた!


「クッションが生きてる?」


慎重に、観察する。“黄色の瞳”と視線があった。

「こんにちは?」


「ふわあ」と、のんびり欠伸をする姿。伸びやかな肢体、三角の耳。黒い柔らかい毛皮に、セリは問いかけた。


「お水、飲む?」


ふわりと魔法で出した水玉は、宙に浮かんだ。




夕食は3人で。話題はシュルトが王都の家の話をしてくれる。この屋敷と往復して

「ウチに来てみる?」


シュルトは王都に服飾の店を持っている。カナンも知っている店だった。

「あ〜、あの辺かぁ。」

「住んでいるのは弟妹達ヨ。ごちゃごちゃしているケド、王都に来た商人や職人が泊まって行く部屋があるの。」


職人見習い、商人見習いの子供。薬師はいないが、知り合いがいるそうだ。

「賑やかそうで、楽しそう。」


セリは行くのに乗り気だ。


「ロードがいないと拗ねるな」

カナンの言っていることが正しいので、全てロードが起きてからの計画だった。


「生活の道具もだけど、装備を考えないとネ。」

「うん。」


雪のない地域での冒険者装備に、興味が向く。

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