第4話 お昼寝

12歳は、まだ子供だ。心身の保護、保護者も要る。しっかりしている分、まだ成長途中であると見ている。


直ぐに、下級ポーション作りの材料や道具を求めてきたセリに『変化に適応するのが先である』と、休ませている。


休息の大切さはわかっているようで、本を読んだり昼寝をしたりとのんびり過ごしていた。


暇を持て余さないよう、本を用意したらセリは温順しく読書して過ごしている。性格的にマイペースだ。獣人に嫌悪感はないようで、後はロードとの付き合い方にゆっくりと慣れてくれれば良いと保護者の面々は思う。


大変なのはこれからだが、それ以上にセリに居心地に良い暮らしを送ってもらおう。その努力は惜しまないつもりだった。


整理も目処がついた。

「セリの様子も今は安定しているようだケド、弟妹は旅の後は何日かして体調を崩すことがあったワ。」


あの年齢で、怪我から治ったばかりのセリだ。


「気候の違いにも慣れが必要だと思う。そう言った部分はワタシがしっかりしないと。」

「人族は繊細なんだねー」


カナンの言っている言葉は獣人の共通認識だ。根本的に体力が違うのを、理解できない。人族も衝動性を理解できないのと同じように。


妖精族、獣人と分けられる。先祖に居たとなれば力や魔力の特徴が現れる。

平均的な能力、特徴が出ていないと“人族”だ。


『セリの出自は分からない。』


知れた事は…あんな辺境の教会に赤ん坊の頃、拾われたという。誰がとは分からなかった。


『精霊の加護があったのでしょう。』


寒い雪の中でも健やかに寝ていたらしいと、セリの育った教会で話を聞いた。

人族の国にも教会はある。


(何故あんな人がなかなか訪れない場所で?)


「今後に影響するかもしれないから調査はするけど、ハッキリとわかることはないだろうなー」


辺境の教会の過去、情報を追うのは難しい。成果はあまり期待できないだろう。


「『妖精の悪戯』、ネ」


味が甘くなった。お酒が少し減る。そんな些細な変化に使う言葉だとシュルトの知識にある。


(赤ん坊の入れ替え、妖精の国へ連れ去ってしまう話なんかはあるケド。)

「まさかネ」

「何がだ?」


シュルトの独り言は、カナンに拾われた。

「セリが妖精の悪戯にあった可能性を考えてたの」


「あ〜、悪戯されやすい奴とか居るんだったっけ。セリちゃんはそれっぽい?」


一番セリの身近に居たロードは、避けられやすい性質だ。そういうのに一番知識がある男は『セリがそうなのかは、まだ観察が足りない。』と言う。それに専門家として今は研究の発表に忙しく動くしかないだろう。


危険のない限り。放っておくのが妖精との付き合い方のひとつだと彼らは知っていた。

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