第2話 冒険者
卵を目玉焼きにして、ベーコンに焼き目がついた。パンと用意されていた野菜スープを器によそって席に着く。キッチンカウンターでセリが朝食を食べていると、もう一人のメンバーが顔を出す。
「おはよー」
狼獣人のカナンは既に起きていたが今、帰ってきたのかもしれない。冒険者の装備を身につけている。
セリの将来設計は、冒険者になる事だったがまだ<冒険者登録>をしていない。
教会から出る年齢になったらと決めていたものの、少し変化し大幅に道筋が変わったものの能力は問題なくあると自負している。
狩りの技能もあり、下級のポーションの作り方も教わっている。冒険者になるため、仕事を請け負える年齢までの研鑽は欠かさなかった。
セリは12歳。年齢は問題ないが、シュルトと<薬師としての登録>に商業ギルドへ行こうという話もしている。
通常、薬師に弟子に入り各種薬品を学ぶ。下級ポーション作りや手作りの薬品にあたるものはそれに該当しない。代々の秘薬やお婆ちゃんの知恵袋として存在していて、売るのに商業ギルドで登録が必要だ。
セリは材料の入手を自身でするため、冒険者の登録も希望している。
できた薬品やブレンドティーは、シュルトが扱ってくれる。最初に薬師として下級ポーションの販売が関門であるが、セリはすんなり通れるようだ。
直ぐにでもと気持ちはあったが、シュルトに止められている。
「ロードが起きるまで、のんびりしていなさいナ。」
移動や疲れが出ているのかもしれない、と心配されていた。
それに、少しくすぐったい気持ちだ。
セリは教会にいた頃から、狩りや採取をしていた。夕食の肉のためという単純な動機。その途中、たまたま雪に埋もれかけた獣人の子を助けた事もある。
このくらいの移動と思わなくもないほど楽だったが、移動距離が長く最短で来ていた。初めての地だ。
【運命神の加護】を持つセリは、身の立て方を冒険者になることに定めていた。旅への憧れも多少あるが、出生の分からないセリがあの国では暮らし難い。
“妖精の悪戯”
祝福とも言われ採取するもの、不思議な痕跡に気づく。誰かの助けへの道標に気付ける能力は雪に囲まれた生活に、少々の食糧を得られた実績があった。
その後、教会で助けた人族の貴族に目をつけられ、<北の砦>で兵士の下働きになるしかなかった。狩りの腕に目をつけられ、徴用された形だ。望んだことではなかったが、竜人ロードに救出されて今に至る。
初めての地、雪に囲まれ慌ただしい日々とは違う。温かく変化した日常の始まり。その側にいる筈のロードは、深く眠っている。
セリはゆっくりと朝食を食べ終えた。
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