[気まぐれ投稿]冒険者活動は保護者付き<番の安全第一>で。〜さもなければ、敵対者が消えます。〜

BBやっこ

第1話 セリ

明るい日差しの中、目を開ける。

部屋は、既に陽が満ちていて明るかった。


「寝過ぎ、た?」


いつもなら、起こしてもらう時間を大幅に過ぎた様で。少々ボーっとする。

(そうだ、王都に着いたんだった。)


セリの部屋とされた場所で眠って今、起きたところ。初めての一人部屋は、2階部分の角部屋。窓からは、『危険地帯』と言われる森の縁が見えているものの、魔導具でバッチリ守られている屋敷は安全だ。今のところ、魔物が建物に近づいてくる事はない。


見かけたとしても、瞬時に対応できる問題ないメンバーが泊まっているが。


雪に囲まれた孤児院で育ったセリには慣れない薄着で眠っていた。陽が燦々と注ぐ部屋は、使用感のない上等な家具が最低限あった。初めてもらった一人部屋は、まだ慣れない。それは、ずっと一緒に寝ていた相手が居ない違和感も加わっているのか?


(いや、ずっとというほど日数は経っていないな。)


セリは寝床からモソリと起き出して、真新しいシャツとズボンに着替えた。

肌触りの良いシャツは新品で、貴族様が着ていてもおかしくないんじゃないだろうか。


そんな事はないのだが、雪に閉ざされた孤児院で育っていれば上等な古着も手に入りにくい。こういった物に囲まれるの事も、やがて慣れていくのかとセリは受け入れていた。


部屋を出ると、向ける視線はロードの部屋。セリを番<ツガイ>、唯一の相手だと言う竜人の男性だ。今はまだ眠っている筈なので、そっと移動する。


竜人であり、氷魔法の得意なロードは特大の魔法を立て続けに使ったためセリから離れて一人で眠っている。


それまで出会ってからほとんどの時間を、一緒に寝ていた。“番の執着はそんなものではない”と言われたがまだ実感には、至っていない。


王都の拠点に来て、2日目。セリの移動範囲はこの屋敷のような建物の入り口からキッチン、自室とロードの部屋だけだった。まだ王都に繰り出す気分にはならない。



「おはよう」

「アラ、おはよう」

机で書き物をしていたらしい。商人のシュルトが顔をあげ、挨拶を返してくれた。

帳簿をつけているのだろうか、『竜の翼』の財産管理を担当している男は、本人も風魔法を使えフットワークの軽い冒険者だ。


眼鏡を外し、何か作ろうか聴いてくれたがセリは少し寝ぼけたまま、朝食となるものを自身で温める。ベーコンと卵、パンも少し焼く。簡単な料理。


ティーセットが置かれていたので、紅茶のお代わりをシュルトに勧めた。

自身の分の紅茶も淹れ、以前とは比べようもないのんびりした暮らしが始まっていた。



ここまで来るのに、雪に囲まれた極北の城に転がり込み、色々あったなと振り返るも。年も越していない短い間に怒濤の如く起こったのだが。


セリは上品な香りのする紅茶を堪能した。

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