第5話 転生したら?

ベロンベロン、ベロリン……。


頬に生暖かいなにかが、あたっている。

わたしは、おそるおそる目を開けます。

目の前に、毛むくじゃらの大きな顔がありました。


「ひぃぃ!!!!」


思わずわたしは、飛び退きました。

ベトベトの顔に手をやると、生臭い涎がべっとりとついておりました。


「お、おぇぇぇっ!」


急に胃がムカムカして、お昼に食べたお弁当をそのまま戻してしまいました。

ああ、勿体ない~!


ワオン! ワオン!


熊ぐらいのサイズの、緑色の犬らしき動物が、わたしの周りをぐるぐるしております。


なんでしょう、この不思議な生き物は?


毛は長くて、両目は覆われています。

神社の狛犬みたいな姿ですが、緑色って、イメージがちぐはぐです。

わたしは、まじまじと犬をみつめました。


犬は、ハッ、ハッ、とわたしにすり寄ってきます。

熊のような前足がわたしを押し倒し、したたか腰を地面に打ち付けました。

ぐえっ! と声が漏れました。

地味に痛くて、ついでに涙が出てきました。

先ほどは階段から落ちるし、今は熊みたいな犬に押し倒されるしで、今日は厄日です。


「ビビアン~!!」


遠くの方で女性の声がしました。

それを聞いて、犬みたいなのが、わたしの身体の上でピクリと垂れた耳を動かしました。


ワオンッ!! ワオンッ!!


涎を滴しながら犬は激しくなきました。

ガサゴソと近くの茂みが動いたと思っていたら、白いドレスを着た金髪碧眼の女性が現れました。


……ご、ごくり。


わたしは、生唾を飲み込みました。

長い金髪がふわりとなびく、美しい顔立ちの人でした。


「えぇっと、どなた??」


美しい女性が困った表情を浮かべました。


「田中、いさおと申します」











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