第4話 残業からの〇〇!?
その日は、一人で残って残業をしていました。
先月分の請求書やら領収書が経理部にあがってきて、自社システムで各部署から申請された金額と、請求書たちの金額が一致しているかをチェック。
そこまでは、同じ経理部の8名の女性陣がチェック済み。
後は、各指定銀行へ振込み作業の業務が残っているが、これはわたしのPCでしか行えず、毎度のことながら18時の時点で残業確定。
銀行には振込み期日があるから致し方ありません……。
――22時半の会社の13階フロア。
「ふぁ~、肩が凝った…」
両腕を真上にのばし、わたしはゴキゴキと肩を鳴らしました。
40になると、お前も身体が疲れやすくなるぞって、親戚のおじさんが言っておりましたが、悲しいかなまさに今、わたしも実感しています。
目はブルーライトと歳のせいでショボショボ、身体は運動不足と歳のせいでガタガタ。
「トイレでもいって、少し休憩しますか」
わたしは、席を立ちあがり、廊下へでました。
廊下も人気がなく、シンとしてとても静か。すでにこのフロアに残っているのは、本当にわたし一人だけのようでした。
トイレをすませ、席に戻ろうと廊下を歩いていると、廊下の先から風が流れてきているのに気がつきました。
「あれ?」
わたしは、誘われるように廊下を突きあたりまで進み、角を曲がりました。
すると、いつもは締まっているはずの避難用扉があいていました。
どうやらここが空いているせいで、風が流れてきたみたいです。
こんな遅くに避難用扉の点検でもあったのでしょうか?
なんとなく、気になって避難用扉から少し顔をだしてみます。
避難用扉の外は、ありがちな階段が1階まで続いています。
外の空気は澄んでいて、雲一つない夜空に大きな月が輝いています。
「満月か……。久しぶりにみましたね……」
子供の頃はあんなに見ていた空を、いつからか見ることすらなくなり、気がつけば、中年になっていました。
子供の頃のわたしが、今の自分を見たらどう思うのでしょうか。
40歳で、結婚もしていないし、子供もいない。でも悠々自適とはいかず、派遣社員という不安定な環境にとにかく必死にしがみついて来たのです。
「きれいだな……」
わたしは、もうちょっと月をよく見ようと、非常用階段に出たときです。
すぐ後ろに誰かが立っているのに気がつきました。
まさか、こんな遅くに、こんな場所に人がいるとは思っておらず、わたしは飛び上がらんばかりに驚きました。
…………ドン!
「へっ……!?」
振り向こうとした瞬間、その誰かにわたしは強く背中を押されました。
「あぁああああああ…………!!!!」
わたしは、押された拍子に身体を支えることが出来ず、足元にある階段を転がりおちていきました。
体中が硬い階段にぶちあたり、ボロボロになりながら、わたしは痛みと恐怖で泣いていました。
いったい、誰がわたしを階段から突き落としたのか?
その謎が残ったまま、わたしの意識は消えていきました。
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