17 小悪魔系男子・リミア

今、クネクネ道を渡りつつ、私たちは絶賛戦い中!

少し進むと、悪精たちが湧き始めたんだ!

「ぎゃぁぁ!変な毒吐いてくる!」

「早く封印するぞ!」

でもさっきの蛇女よりは弱くて、私でもやり合えるような相手でよかった。

「攣!」

全ての悪精たちを倒した私たちは一息つく間もなくまた道を走っていく。

「ライくん足早いね!元からだけど、前より早くなった?」

ライくんは風をきるようにビュンビュン走ってく。

「毎日家の周り30周してるからねっ!」

ライくんが得意げに答える。

「さ、30周⁉︎」

ライくんの家は神社で、とっても広い!

それを30周もしてるなんてすごい!いや、やばい!

それに比べて私は、学校の体育成績B。

運動もそんなに得意じゃないからなぁ…。

「はぁ、はぁ…」

すぐに息が切れてしまう。

「大丈夫⁉︎休憩挟んでもいいよ!」

少し前からライくんの声がする。

「大丈夫っ!すぐ追いつくよ!」

息が苦しくて辛いけど、桜ちゃんのためなんだから!

「ハァ、ハァ、にしてもキツイっ!うわぁっ⁉︎」

急にバランスが崩れて足をひねっちゃった!

その勢いでこの道の下に落っこち…

「ハイ、ストーップ!」

誰かが私の手を掴んだ。

「こんなところで死んでもらっちゃあ面白くないのだ!」

男の子の声。

振り返ると、私とおんなじくらいかそれより小さいかくらいの男の子が立っていた。

頭にはツノが生えていて、鋭い牙はキラリと光っている。

明らかに悪そうな猫目をしたその子は子供みたいにはしゃぎ出す。

「リミア様が助けなきゃ死んでいたのだぞ、君。感謝するのだ!リミア様はたった今、いいことをしたからな!」

リミアと名乗る男の子がが胸を張って言うと、

「「………」」

シーン。沈黙。

「どうしたのだ⁉︎2人ともフリーズしてるのだ⁉︎はっ!もしかしてリミア様が素晴らしすぎて固まってしまったのか!はーっはっはっはっは〜!」

リミアがまたまた笑うと、

「「………」」

沈黙。

「おい!なんか言ったらどうなのだ⁉︎」

リミアが少しムッとした顔で私たちを交互に見つめる。

「はぁ、お前ら本当に恥ずかしがり屋さんだなぁ。よし!お前らが喋らぬのならリミア様が自己紹介してやろう!」

「「自己紹介?」」

「俺様の名前はリミア・ラヌーン。好きなものは断然チョコ!お前らには特別に、今日からリミア様と呼ばせてやろう!はぁーはっはっはっ〜!」

また胸を張りながら高らかに笑う彼をライくんが何か言いたげな目で見る。

「よいかッ?セツがお前らを倒して、女をさらって来いとリミア様に頼んだ!ご褒美はチョコだからさっさと終わらせるぞ!」

「セツっ⁉︎」

ライくんはセツくんの名前を聞くと、サッとお札を取り出した。

「よいかっ?ではいくぞっ!」

リミアがそう言った瞬間。

バッ!

ライくんの頬が切れ、血が出た。

「ライくんっ⁉︎」

今一体何が起こったの?

「ハハハハハ、遅いぞお前?リミア様のスピードにもついていけないのか?」

「くっ!」

今、わかった。

ライくんの頬はリミアに斬られたんだ。

ライくんが構えた瞬間に、リミアが高速移動してライくんのところまで行った。

そしてライくんの頬を引き裂いたんだ。

「かわいいのう!情けないのう!さっきまでお札を取り出して張り切ってたのになぁ!今じゃ頬を抑えながら逃げているだけなのだ!」

リミアはライくんを追いかけながらビュンビュン移動していく。

ライくんも負けじと頬を手で抑えながら走っている。

でもここはクネクネ道。道が細いから逃げまとう方が難しい。

落っこちたら一巻の終わりだし、私たち大ピンチじゃん!

何か私も手伝わないと!

私は隠し持っていたお札をスッと取り出した。

よし。気づかれてない。

深呼吸を一回。できるかわからない一発勝負。

失敗したらライくんのことを見殺しするだけだ。足を引っ張ってしまうかも。

でも、やる。私は勾玉を信じる。

今までいろんな形に変形させてきた勾玉。

そんな勾玉だったら何かを強化させることだってできるんじゃない?

ふぅ。準備はできた。

足をグッと構えて。お札を握って。

「青玉よ!私の足を強化して!」

私はそう唱えると考えは的中。

私の足の見た目はそのままなのに、さっきまでの疲れや痛みは全然ない。

試しにジャンプすると、2メートルぐらい飛んだ!

「これで!」

私は全速力でライくんの元へ走っていく。

ライくんよりは遅いけど、いつもの私より、10倍くらいスピードと体力がある!

「強化されてる!」

私はもうライくんのすぐそばだ。

リミアの後ろからバッと飛び出してお札をはっ…

「どーしたのだ?」

くるっと後ろを振り向いたリミアにお札を奪われる。

気づかれたっ。

「お前も持ってたのか?面倒なやつだのう。」

リミアは私の持っているお札を次々と道の底へ捨てていく。

そしてリミアがこちらを振り向いた。

その顔が怖い。恐怖で足がすくんで動けない。

「そ…れっ…」

「なあに?」

リミアが顔を近づけてくる。

今にも叫びたいくらい怖いのに全然声が出ない。

「そ…れっ…ライ…くっ…がいっしょっけんめっ…作った…のにっ。」

私は蚊の鳴くような声を絞り出す。

「それって、お札のこと?ハハッ、リミア様にとっては大事じゃないから関係ないのだっ!それにお前らはリミア様みたいなスーパーヒーローと違ってゴミどもだからなぁ。もちろんお前らの友達や家族もだっ!ハハハハハッ!」

「!」

ヒドイ。許せない。

辛い気持ちに打ちのめされようとした時。

「ヒーローは、どんな障害があっても努力を惜しまず、耐え抜く力を身に着けたごく普通の人間なんだ。」

ライくんがそういった。

そして続けて、

「打ちのめされたかどうかではなく、立ち上がったかどうかが大切だ。リリコ。」

「ライくん…っ。」

そうだ。そうだよ。桜ちゃんのことをおいてなんかいけない。

立ち上がらなくちゃ!

私は勾玉をぎゅっと握った。

「私、大切な友達を助けなくちゃいけない。」

私はギンっとリミアを睨むと、

「私は、私たちはっゴミなんかじゃない!ヒーローでもない!大切な仲間だ!!」

思いっきり叫ぶと勾玉が応えてくれるような気がした。

お札がないんじゃ何もできないかもしれない。

でもそんなの関係ない。できるできないじゃない。「やる」んだ。

勾玉に託す。

「時と共に眠れ。空と繋がり、星を撮り。今、今宵の元に封印せよ!」

ピカァッ!!

「くっ!なんなのだっ⁉︎」

今まで以上に光った勾玉でリミアが後ずさりをする。

「攣!!」

私はリミアのことを思いっきり押す。

ドッ!

「うわああっ!」

リミアは足を滑らせてクネクネ道の底に落ちていった。

「バイバイ。偽ヒーローさん!」

私は道の底に向かって叫んだ。

「リリコ…すごい!」

振り返るとライくんは目を見開いて突っ立っていた。

「ううん、こちらこそっ。ライくんがあの時言葉をくれたから今こういうことができてる。ありがとうっ!」

私がニコッと笑いかけると。

『−ザザッ、パチパチパチー!すっごい戦いだったねー!ふふっ、僕、面白すぎてずっと笑いっぱなしだったよっ。真剣な顔して悪あがきして。ふふっ!あはははははっ!ま、でもリミアも大三魔の1人だったから倒したのはすごいことだよ!知恵を使ってよくできました!』

「セツっ!」

セツくんの笑い声が放送された。

『まだ来ないの?待ちくたびれちゃったよ〜。早く来ないと桜を殺しちゃうよ?』

「桜ちゃんを殺すっ⁉︎や、やめて!そんなことしないで!」

『ふふっ。リリコ、あせっちゃってかーわいい!大丈夫。冗談冗談っ♪』

「ちょっ!」

ほんっと気が狂いそうなことばっかり言ってくる。

『ま、あとちょっとだよ!頑張って!じゃ、待ってるよー!』

その言葉を最後に放送がぷつりと消えた。

「じゃあ行くぞ!あと少しがんばろう!」

「うん!」

さっきのを聞かなかったようにライくんは走り出す。

よし!もう少しで桜ちゃんのところだ!

私もライくんの後を追って走り出した。


つづく(次回はセツの居場所にたどり着いて、いよいよ決戦です!)

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オバケ封じ @kurage-kurione

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